人は相手の何を見て「感じが良い」「感じが悪い」と感じ取っているのだろうか。心理学者の舟木彩乃氏は「人は、相手の様子から『安心できる人か』『信頼できる人か』という2点を感じ取り、感じの良さ・悪さを判断している。第一印象は長く残るため、ぜひ初対面から『あなたを尊重しています』という姿勢を貫き、良い印象を与えてほしい」という――。
指をバツの字にするビジネスマン
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「怖そう」という印象がひっくり返った瞬間

カウンセリングや打ち合わせを通じて多くの人と関わる中、相手の印象を決定づけるのは、「相手を“個”として尊重しているか」という姿勢だと感じます。

ある企業の役員であるAさんと初めて会ったときのことです。私はAさんと顔を合わせるまで緊張していました。Aさんをメディアで見た際、「冷徹そう」「怖そう」という印象だったからです。

しかし私がAさんの部屋に入った瞬間、Aさんはパソコンを打つ手を止めて椅子から立ち上がり、しっかりと私の目を見て「はじめまして。楽しみにお待ちしていました」と、穏やかな笑顔と心のこもった声で迎えてくださいました。「あなたのための時間を確保しています」というメッセージが非言語で伝わり、信頼関係の土台が築かれた瞬間でした。

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「怖そう」だと思っていた人が、実際は「腰が低い」「穏やか」だった場合、人は印象の“差分”に強く反応します。これは心理学でいう「ギャップ効果」「期待違反理論」に当たります。良い意味で期待を裏切ることは、好感が一気に高まると同時に、印象形成における強力な要素になるのです。

また、メディアに出る方は、普通にしていても「偉そう」「近寄りがたい」と思われがちです。そこに「腰が低い・丁寧・謙虚」という態度が加わると、好意が一気に跳ね上がることがあります。これは「ハロー効果」の一種です。一つの良い特徴が全体の印象を底上げするのです。

印象管理に失敗したBさん

一方で、「この人は感じが悪いな……」と思ってしまう瞬間もあります。

Bさんは、相手の話を熱心に聞き、気分良く回答できるような質問をするなど、相手の立場で立ち回れる方でした。しかしそれは、自分より役職の高い人や、関係が有利にはたらきそうな人に限定してのこと。打ち合わせ中にお茶を運んできたスタッフが視界に入った瞬間、表情が完全になくなり、そのスタッフから視線を外したのです。私はその振る舞いを見て、「感じが悪い……」と思わざるを得ませんでした。

人は自分ではなく「自分より弱い立場の人」への振る舞いを見て、その人の本質的な誠実さを判断します。このような冷徹さは、周囲に強烈な「感じの悪さ」と不信感を植え付けてしまうのです。

なお、これはBさんの「印象管理の失敗」とも言えます。自分にとって有利な人の前では“良い自分”を演じますが、弱い立場の人には気が緩み、本性が漏れる。印象管理はエネルギーを使うため、「重要でない相手」にはコントロールが外れやすく、一瞬でその人の“本当の価値観”が露呈するのです。