アカデミー賞受賞を逃した背景

そうしたなか、日本の映画興行にもっとも影響力があり、映画会社サイドの本命であっただろう「第98回米国アカデミー賞」では、日本映画史上初となるメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされたが、惜しくも受賞を逃した。

受賞したのは『フランケンシュタイン』(Netflix)。壮大なエンターテインメント大作における主人公の複雑な造形の特殊メイクは、これまでの受賞作を見てもアカデミー賞好みのどストレートの作品であり、大方の予想通りの結果になった。

アカデミー賞特有の評価軸の相対的なレースでは敗れたが、技術部門でノミネートされたことの意義は大きい。日本映画史のひとつの扉をこじ開けたことは高く評価されるだろう。

『フランケンシュタイン』ギレルモ・デル・トロ新作 予告編 Netflix

アカデミー賞の苦戦は想定内?

そもそも、今回のアカデミー賞の国際長編映画賞では、日本代表としてエントリーされ、最終候補になるショートリストの15本までは残ったものの、最終的なノミネート5本には選ばれなかった。また、最高賞になる作品賞では、ノミネートにすら選出されていない。

国内では稀に見る高い評価を受け、映画賞を総なめにしている本作だが、本家アカデミー賞では、技術部門のノミネートのみにとどまった。

それは事前に予想されていたことでもあった。

近年の多様性を重視するアカデミー賞は、国外のアカデミー会員を増やした2010年代後半以降、従来の最重要前哨戦とされる「トロント国際映画祭」に加えて、世界三大映画祭(カンヌ、ヴェネツィア、ベルリン)の受賞作が候補に入る傾向がうかがえる。実際、今回の国際長編映画賞のノミネート5本は、いずれもカンヌまたはヴェネツィアで賞を受賞している。

『国宝』は国際映画祭への出品は多いものの、そのどれもコンペティションではなく、そこでの受賞はない。

米アカデミー賞受賞式の会場、ドルビーシアター
写真=iStock.com/Davslens Photography
米アカデミー賞受賞式の会場、ドルビーシアター