世界ではどう評価されたのか

では、海外の国際映画祭での評価はどうだったか。

まず、公開1カ月前の昨年5月に「第78回カンヌ国際映画祭」の監督週間に出品され、公式上映ではスタンディングオベーションが沸き起こった。上映中の退席も少なくない厳しいカンヌの観客をはじめ、各国メディアから総じて高い評価を受けた。

その後、「第44回バンクーバー国際映画祭」で観客賞を受賞したほか、「第50回トロント国際映画祭」のスペシャル・プレゼンテーション部門、「第30回釜山国際映画祭」のガラ・プレゼンテーション部門、「第27回上海国際映画祭」のインターナショナル・パノラマ部門、「ニュージーランド国際映画祭2025」のビジョンズ部門、アメリカ映画協会(AFI)が主催する映画祭「AFI FEST2025」のワールドシネマ部門にも出品され、現地で公式上映された。

積極的に世界中の国際映画祭に出品し、観客およびメディアに作品を見せ込んできた。そうした戦略を立てる背景には、そこから話題を喚起し、日本の興行に勢いをつける狙いがある。裏を返せば、それだけ作品内容に自信を持っていたことがあるだろう。

ただ、どの国際映画祭もメインのコンペティション部門への出品ではなかった。現地では、映像美への評価の一方、物語性や演出の一部にはさまざまな批評があり、賞賛一辺倒ではなかったことも伝えられている。

カンヌ国際映画祭
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「感傷的なメロドラマ」という評価も

海外メディアの批評では、ニューヨーク・タイムズは、衝撃的な冒頭シーンから主人公が歌舞伎の家元に入るまでの前半の物語性を評価する一方、後半は「波乱万丈の感傷的な人間ドラマに寄り過ぎている」と指摘する。

一方、北米映画業界誌バラエティは、日本の伝統芸能を美しい衣装と現代的な映像演出で丁寧に映し出すことを評価し、フランスでも一般紙ル・パリジャンは、熱量のこもった壮大な物語とキャストの深みのある演技に対して高評価を与えたことが伝えられている。

在日韓国人3世である李相日監督のルーツでもある韓国では、名門家系の血筋と伝統芸能のしきたりに抗う物語が、自国のコネ社会とも重ねられ、メディア、批評家、観客ともに絶賛を受けていた。釜山国際映画祭での公式上映後の会見には、会場に入りきれないほどのメディアがつめかけ、李相日監督への質問が途切れない熱量の高い質疑が繰り広げられ、韓国での評価と注目度の高さを示していた。

また、2時間54分という長尺に関しては、外国人が観る異文化の物語としては長すぎるとの指摘もあり、その部分への評価は割れていた。