独裁者による「処刑」は含まれない

人の命にかかわる問題ですから、死刑制度はその国の宗教観や歴史、習慣や文化、民族意識などと密接な関係があります。

ヨーロッパ諸国で死刑廃止国が多いというのは、キリスト教国家、特にカトリックの国々を中心に、死刑が廃止されてきたと見ることもできます。ただし、これらの国々が死刑廃止を唱え始めたのはごく最近の話で、それまでは散々死刑を執行していましたが。

逆に、非キリスト教国家は、死刑が存置されている国が多いのではないでしょうか。中東の国々や、インドネシア、マレーシア、日本もそうですし、インドやタイ、ベトナムなどもそうです。他にもアフリカだとエジプトやエチオピアなどもあります。

東南アジアでは、長年スペインの植民地だったフィリピンはカトリックなので死刑を廃止しましたが、ドゥテルテ前大統領が麻薬の密売に関わったとされる人を数千人単位で「処刑」したことは周知の事実です。しかし、このような人数は「死刑」に含まれません。

そう考えていくと、一概にどちらが正しいと言い切れる問題ではないのです。そういう各国のアイデンティティにも大きくかかわるデリケートな問題に、余所の国や国連やNGOが口を出すのは内政干渉です。

もちろん、中国や北朝鮮、あとアフリカにもいくつかありますが、無辜むこの国民が正式な裁判を経ることなく、あるいは不当な裁判で死刑にされる独裁国家に対しては、国際社会が断固として声をあげるべきであることは、言うまでもありません。

事件現場で警察に射殺される凶悪犯

また、アメリカの死刑制度について触れていますが、アメリカ人で弁護士でもある私は決して騙されません。

アメリカにはいくつ州がありますか? 50州です。2024年末現在、23州が死刑を廃止し、27州は死刑を存置しています。そのうちカリフォルニア、オレゴン、ペンシルベニアの3州は州知事令により死刑執行を停止していますが、残りの24州が死刑を執行しているのです。

それから、これはまったく自慢できない話ですが、死刑を廃止した州であっても、凶悪犯を警察が現場で射殺することは日常茶飯事です。むしろ死刑が廃止された反動で、義憤に駆られた警察官が、犯罪の現場で「私刑(=射殺)」に走る確率が上がるのではないかという指摘もあります。

警察官
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