MAGA派のトランプ離れ

イラン戦争の長期化に対し、トランプ氏が掲げるMAGA(Make America Great Again=米国を再び偉大に)を信奉する人々、いわゆるMAGA派が反発する懸念が生じたことも、彼を動かした要因とみられる。イラン攻撃に関するMAGA派の当初の支持率は高く、約9割近が賛成しているとのデータもあった。もっとも、これはイラン攻撃が「短期間で終了する」との前提があってのことだろう。1月のベネズエラ作戦が早期に終了した成功体験から、今回も同様の展開が想定されていたはずだ。

MAGA派は、外国への軍事関与は抑制して、国内問題を最優先にするという考え方で結束してきた。トランプ政権の政策に関しても、不法移民の流入阻止などの治安維持には強い賛同を示してきた一方で、対外干渉には否定的だ。ウクライナ支援を最も強く拒否してきたのも彼らである。米国民の血が流れないウクライナ支援でさえこの状況であり、戦争が長期化し米兵の死傷者が増える事態が想定されれば、反対の声が強まるのは当然だ。

「アリゾナ・フォー・トランプ」集会に参加した、アメリカ合衆国前大統領ドナルド・トランプの支持者たち
「アリゾナ・フォー・トランプ」集会に参加した、アメリカ合衆国前大統領ドナルド・トランプの支持者たち(写真=Gage Skidmore/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

「エプスタイン問題をかわすため」の批判も

実は、イラン攻撃には当初から反対の声が上がっていた。MAGA派のオピニオンリーダーの一人であるタッカー・カールソン氏は、イラン攻撃に対し「完全に嫌悪すべき、邪悪なもの」と批判した。

カールソン氏はメディアでの情報発信でトランプ氏を支え、大統領選の勝利に貢献し続けてきた人物だ。このように一部のMAGA派は事態悪化を見越していた。うまく収束を図らなければ、彼らの懸念が現実となり、MAGA派の支持離れが進むリスクがある。

エプスタイン問題がくすぶり続けているタイミングも悪かった。性的虐待罪で起訴された故・エプスタイン氏とのトランプ氏の関係性を問題視しているのも、一部のMAGA層だ。

MAGA派の重要人物であったマージョリー・テイラー・グリーン氏はこの点を取り上げ、トランプ氏と対立し下院議員を辞職するに至った。「エプスタイン問題をかわすためにイラン攻撃を始めた」との観測も出るほどであり、支持層内に亀裂がある中で、更なる火種は避けなければならない。

米中会談を有利に運ぶため

外交スケジュールの面では、3月末から4月初めとされるトランプ氏の訪中を控えていることも影響した可能性がある。トランプ氏の訪中時には米中首脳会談が開催され、トランプ関税や貿易不均衡に加え、台湾問題も議題にのぼる見込みがある。

今回のイラン攻撃自体、対中政策を意識したものとの見方は多い。ベネズエラ攻撃に続き圧倒的な軍事力を見せつけることで、交渉を控えた中国に圧力をかける狙いがあったとの見方である。また中期的にも、中国との結びつきが強いイランを叩くことは、中国への逆風となり圧力材料になる。