校長を無視する生徒指導部長

じつはその年の夏、こんな“事件”があった。

連日の猛暑日が続く中、生徒数名が登校時に頭からタオルをかぶり、手に携帯用扇風機を持って登校していた。これについて、学校運営会議で生徒指導部長の江藤教諭が「見た目がみっともないのでやめさせたい」と主張した。

しかし、この猛暑で学校に来るのも一苦労(※7)だ。暑さ対策としてやむをえない面があると考えた私は「暑いのだからそのくらいは仕方ない」と反対した。議論はそこで終わった。江藤教諭から反論はなく、私の反対意見を受け入れてくれたのだと捉えていた。

ところが、その数日後、生徒との雑談中のことだった。

「今朝もタオルかぶっていたら、『いい加減にせえよ!』って江藤先生に怒鳴られちゃいました」

男子生徒が江藤教諭のモノマネをしながら言う。どうやら学校運営会議での私との話のあとも生徒たちに注意を続けているらしい。

たしかに教師は臨機応変な対応が必要で、「校則にないから指導できない」という姿勢ではうまくいかないこともあるだろう。しかし、だからといって、校則にも決められておらず、校長から反対意見が出されているのに独断で指導するのは組織としての秩序を乱すことになる。

タオルで汗を拭く男子高校生
写真=iStock.com/paylessimages
※写真はイメージです

※7 学校に来るのも一苦労
通学を見ていると、スクールバッグ2つを両肩からクロスしてかけ、手にはタブレット型パソコンの入ったバッグと部活動の道具が入ったスポーツバッグを持っている生徒もいる。荷物がとにかく多すぎるのだ。

「よそ者」だからこそできる改革

私は「よそ者」で、任期はおそらく2年。そのことは教師みんなが知っている(※8)

今さら注意をしても私の言葉に耳を傾けるとは思えない。1年で退任した県庁職員の大道さんのことが思い出された。

私は覚悟を決めた。こうなったら、教師が好き勝手に指導できないように「教師を縛る校則」を作ることにしよう。それはきっと魅力ある学校づくりにもつながるはずだ。

※8 教師みんなが知っている
校長の任期は通常でも2〜3年。また県庁からやってきた校長の場合みな2年であったため、私が2年で退任するのは既定路線だった。