校則に法的根拠はない
私が公務員として働き始めてから30年以上が経つ。その間、仕事をするうえで注意していたことの一つは、「県民に義務を課したり、権利を制限したりする場合には、法律や条例などの明確な根拠が必要である」ということだ。
県民に義務を課せるのは、法律や条例が国民や県民によって選ばれた議員によって定められたものだからだ。選挙で選ばれていない公務員が一方的に県民に義務を課すことは許されない。これは行政の基本である。当たり前に思えるかもしれないが、平成の初期ぐらいまでは「行政指導」の名のもとに担当者が事業者に口頭で指導したり、申請書を受理しなかったりすることが慣習的に行なわれていた。そうした行為に批判が高まり、行政手続法などの関連法令が整備され、こうした慣習は廃止されていったのだ。
学校は教育目的を達成するための組織であり、そこに属する生徒がその教育目的のためにある程度の制限を受けることはありえる。だが、教師が根拠もなく「下着は白色に限る」と指導し、目視で検査することなど許されない。
では、校則に記載がないにもかかわらず、どうして「許されない行為」が行なわれているのか?
おかしな校則を強いる“ある組織”
調べてみると、“ある組織”の存在が浮かび上がってきた。
わが県には、県立高校の生徒指導担当教員によって構成される「生徒指導連盟」という組織があった。そこでは年度はじめに県内統一の生徒指導方針を申し合わせていた。その内容は次のようなものだった。
・髪は眉毛や耳にかからないようにする。
・(男子生徒は)後ろ髪を襟にかからないよう刈り上げる。
・夜間の外出は、男子は午後9時まで、女子は日没まで。……etc.
教員たちは生徒指導連盟で決めた生徒指導方針を各学校に持ち帰り、これに沿って生徒指導をしていたというわけである。
生徒指導担当の教員が集まり、指導の基準を申し合わせること自体は業務の進め方として問題ないだろう。しかし、それはあくまでも「指導の基準」にすぎず、その後、各学校で議論し、必要に応じて取捨選択したうえで校則として定めるべき(※6)である。そうした手続きを経ず、生徒指導連盟で決めた方針をそのまま生徒に適用するのはおかしい。
※6 校則として定めるべき
じつは校則について定める法令はない。しかし、判例では「学校が教育目的を達成するために必要かつ合理的範囲内において校則を制定し、児童生徒の行動などに一定の制限を課することができ、その権限は学校運営の責任者である校長にある」とされている。

