「長時間残業が当たり前」は時代遅れ
事例④ 自覚のない「ブラック化」が進む会社
長時間労働が常態化している企業では、「若いうちは苦労すべき」「残業は成長の証」といった価値観が根強く残っていることがあります。ある不動産の営業会社では、月70~80時間の残業が当たり前でしたが、管理職はそれを問題視していませんでした。
ところが、新卒者や若手社員は次々に退職。「思っていた働き方と違う」「心身がもたない」という声が多く上がっていたにもかかわらず、経営層は「最近の若者は根性がない」と片づけてしまっていました。
さらに、残業代についても事前に説明されていた金額より大幅に少なく、労働時間に見合っていなかったことが判明し、退職に至ったケースもあります。
この“認識のズレ”こそが、定着率悪化の大きな要因です。
無自覚な「ブラック職場」は失敗し続ける
これらの事例に共通するのは、「辞める側に原因を求めている」という点です。
しかし実際には、人が定着しない会社ほど、自社の環境を疑っていないケースがほとんどです。
特に注意すべきなのは、「辞めた理由」を正確に把握できていない企業が非常に多いことです。退職時の面談では本音が語られにくく、「家庭の事情」「キャリアアップのため」といった無難な理由で処理されがちです。その結果、企業は真の課題に気づけないまま、同じ失敗を繰り返してしまいます。
独自ルールは本当に必要なのか。新人が安心して質問できる体制は整っているか。
人間関係の問題を放置していないか。働き方は時代に合っているのか。
これらを客観的に見直すことが、定着率改善の第一歩となります。
また、定着率の高い企業に共通しているのは、特別な制度や高待遇だけではありません。新人の声に耳を傾ける姿勢、失敗を責めるのではなく学びに変える文化、そして「ここで働き続けるイメージ」を持たせる丁寧なコミュニケーションです。
これらは大きなコストをかけなくても、今日から見直すことができます。
弊社でも四半期に一度、社員全員の目標設定の確認や、日々の社員の業務の流れや近況などを把握するフィードバックセッションも行っております。
採用はゴールではなくスタートです。
新卒社員・中途社員が入社した後の教育・フォローが不足している企業は、決して少なくありません。人が辞め続ける会社は、信頼もノウハウも蓄積できません。逆に、働きやすい環境を整えた企業には、人は自然と集まり、長く活躍してくれるのです。
「人が辞める会社」から「人が育ち、残る会社」へ――。
その転換点は、経営層や管理職が現実と向き合うところから始まるのです。


