300人×20分=100時間の面談
面談を始めて2、3年してようやく相互理解が深まってきた。ある支配人からは「初めは『わざわざ遠方から呼び出して、何の話をするんだろう』と思っていた」と明かされたこともある。今では面談はすっかり定番化。貴重なコミュニケーションの時間となっている。
現在は支配人が300人を超え、全員と話すと約3カ月分の会議時間が必要になり他の業務に支障がでるほどなので、やむなく一昨年から人材開発部長と分担しているというが、2年に一度は必ず顔を合わせるようにしているという。
日本において女性の管理職登用が進まない理由には、ロールモデルの不在も大きい。育児や介護、そのほか女性特有の体調不良などとどう折り合いをつけながら働くのか。相談相手がおらず、悩みや孤独感を募らせてマネージャーになるのをしり込みしたり、退職してしまう人は少なくない。一方、東横インでは支配人同士の「井戸端会議」のような横のつながりが、セーフティネットの役割を果たしている。
「毎月行われるエリア会議では、業務報告ももちろんですが、雑談も活発です。仕事の相談はもちろんですが、『子供が不登校で』と悩む支配人を、別の支配人が『うちもそうだったけど、なんとかなるわよ』と励ましたりする。女性特有のがんを経験した支配人が、同じ病気の人の相談に乗ることもあります。相談相手やロールモデルの存在は本当に大きいと思います」
「辞める前に休んでよ」
柔軟な働き方ができることも大きい。東横インでは、基本的に時間の使い方が本人に委ねられている。
「支配人には『自分で時間をコントロールしてください』と伝えています。朝来ても、夜来てもいいですし、病院に行ってから出社してもいい。それをいちいち会社に許可を取る必要はありません。スタッフに『今日は遅れるね』と言っておけばそれでいいんです」
40代、50代の女性支配人たちは、育児と介護の両方を担う「ダブルケア」に直面している人も少なくない。24時間365日稼働するホテルという職場でありながら、自らの裁量で時間を調整できる環境が、離職を防いでいる。
「私自身、夫と戦いながら子育てをしてきました(笑)。だからこそ、家庭の大変さは痛いほどわかります。支配人には『辞める前に休んでよ、介護休暇もあるからね』と伝え続けています」
また、業務の引き渡し方も見直した。以前は「着任初日から全責任を負わせる」ようなスパルタ方式だったが、業務を切り分けて徐々に渡していくスタイルに変更。この結果、かつて高かった支配人の1年以内離職率は、ここ数年で劇的に改善し、一時は4年連続でゼロに。最近では、いきいき働く支配人に刺激を受け「私もやってみたい」と従業員から支配人にチャレンジするケースも増えてきた。


