女性が胸を露出する「額縁ショー」
新宿帝都座(現「アップル・ストア新宿店」)5階の小劇場で開催された「泰西名画アルバム」と題するショーを見たのだ。この日、定員420名のスペースに2000人が押しかけ、5階の入り口から階段を通って帝都座の裏まで列ができた。彼らのお目当ては額縁ショー「ヴィナスの誕生」。仕掛けたのは、元東京宝塚劇場の支配人で日劇ダンシングチームの育ての親、秦豊吉だった。秦はこのとき公職追放中だったが、小さい劇場ならではの新機軸を狙い、まんまと大当たりをとった。
内容は他愛ない。カーテンが開くと大きな額縁のなかにショーツとガーターストッキングをつけただけの女性(中村笑子)が腕で胸を隠して立っている、ただそれだけである。客席は緊張と集中で静まり返った。10秒か20秒でカーテンが閉まると、ため息ともどよめきともつかない声がもれたという。
翌月の「ル・パンテオン」では甲斐美春(後に一、美和と改名)が胸を露出、下腹部は大きな帽子でかくしてたたずんだ。ピンクやブルーの照明が当たり、幻想的な雰囲気だった。
当時、目撃した芸能評論家の橋本与志夫曰く「つい、二、三年前まではジャングルや満州の荒野で、鉄砲をかついで、生死の境目を歩いてきた人たちが見たんですから、頭に血がのぼったのも、無理ありません。今まで罪悪視されていたものを、美しい姿として見せたから驚いた。この世のものとは思えぬほど美しかった」(「芸能史を歩く 昭和22年1月」)。
GHQはストリップを許容した
頭に血がのぼったのはメリーも同様だった。一緒に見に行った矢野に、ただ立っているだけではなく、美しく踊って女性美を出したらいいのではないかと言ってみた。やりたいとまでは言わなかったが、矢野は「ぜひあなたがやってごらんなさい。日本ではまだやらないことだけど、非常にいいことだから」と促した。
このアイデアは方々で起こったようで、モデルを酔わせてふらふらと動かしたり、ブランコに乗せてみたりするショーが現れた。みんな、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)がどこまで許容するか手探りの状態だった。おとがめなしとわかると、3月には日劇小劇場で「りべらるショー『院長さんは恋がお好き』」にて、鈴木好子がヘソを見せてベリーダンスをしながら衣装を脱ぎ、最後の一枚になったところで会場の照明が落ちるという演出がなされた。いわゆるストリップ・ティーズだが、この時点ではまだそのような呼称はなかった。

