罪悪感ママ
もう一つは、「罪悪感ママ」だ。
「日中仕事をしていて、わが子のフォローが十分にできないことに罪悪感を持ち、後ろめたさがベースとなった受験をしてしまうタイプです。自分は専業主婦の母親に育てられて、家に帰れば母親がいるからさみしい思いもしてこなかった。
でも自分は、子供にさみしい思いをさせている。だからせめて、『子育てタクシー』で塾まで迎えに行かせ、高級弁当を持たせるなどしてお金をかけ、少しでもわが子に快適な環境を与えようという発想になるのです。
極端なケースでは、平日は塾の送迎ができないからと、土曜日や日曜日に塾や習い事を4つもはしごさせ、送迎をしているという話も聞きます。それを子供が心から望んでいるなら構いませんが、罪悪感に駆り立てられて『あなたのために』と予定を詰め込んでいるなら、子供には苦痛なだけでしょう」
塾代などお金をかけることで子供への期待値が上がると、さらに自分を追い込んでしまいがちなのも問題だ。「ここまでやってあげているのに、結果が出なかった。何で? 私がフォローできなかったから? 私が働いているから? 私が選んだ塾がダメだったんじゃないか。もっと面倒見のいい塾を選ぶべきだったんじゃないか」とどんどん泥沼にはまってしまうのだ。
感情が外側ではなく内側に向くと…
「中学受験する子供を持つ親が抱える怒りや不安などネガティブな感情を外に小出しにできる人はまだいいんです。心配なのは、子供を追い詰めないようにと感情を抑圧してしまうタイプ。感情が外ではなく内側に向き、自責の念が蓄積する。それも限界がくれば大爆発して、周りに対する言葉のトゲは大きくなりやすい」
外で働いている強いお母さん方は、人に弱みを見せることが苦手かもしれない。ならば、せめて塾の面談でだけでも吐き出してほしいと、富永さんはアドバイスする。
「塾の面談で、それまで溜めに溜めてきた感情を吐露し、涙を流すお母さんも珍しくないんですよ。以前『子供にチック症状が出ていることに気づいていながら、忙しくて何もしてあげられなかった。自分が追い込んでしまった』と自分を責める方がいました。そこで僕は『受験勉強の過程でチック症状が出る子は珍しくない。決してお母さんのせいではないですよ』と言うと、その方はほっとしたのか涙を見せました。
中受に対する目的は各家庭によって違いますが、合格を第一目標にすると、たちまちコスパが悪くなります。そうではなく、学ぶ楽しさ、努力する習慣、ひたすら向き合うという体験を獲得することができれば、仮に不合格だったとしても、絶対に大学受験につながる有意義な体験になると思うんです」
「達成目標ありきのプロジェクト」と捉えず、親子で「プロセス」を楽しむ学びのハイキングのようなものとして捉えられれば、どんなに気が楽になるだろう。


