母のほうが子供を追い詰めやすい理由

わが子を自分と切り離せないのは、父親よりも母親のほうが多い印象があると、富永さんは話す。

「企業で管理職を務めるなど現代社会で活躍をする女性が増えています。令和の時代とはいえ男社会の日本の企業で昇進昇格できるのは、頭脳優秀さに加え、男性よりも何倍も努力をしてきたから。結婚・出産後も、仕事だけでなく育児・家事とフル回転し、わが子の将来を考えて中学受験のサポートも頑張る方がとても多いです」

しかし、そうした優秀な女性たちには“欠点”もある。人に負けまいとする努力を当たり前だと、若い部下や、わが子にも同等の努力や能力を求めがちなのだ。

「そうすると、『これくらいのこと、できて当然でしょ』『私ならできるまでやるけどね』という感覚を子供に押し付けてしまうこともあります。上に上り詰めてきた女性たちに比べて、弱冠12歳の子供、特に精神発達が女子よりゆっくりな男子は、メンタルが弱めです。母が圧をかけ続けると、あっという間につぶれてしまいます。そして早晩、母親に対して心を開かなくなります。この人に弱音を吐いても通用しないだろう、と」

中でも子供をつぶしやすいのは、次の2タイプだという。

AIを駆使する「プロジェクトママ」

一つは、仕事のように「中学受験」というプロジェクトを回そうとする「プロジェクトママ」だ。

「入試問題の傾向や予想問題もAIに作らせることもあり、合格へのプロセスをロジカルかつシステマチックにプロジェクトを進めようとします」

タッチスクリーンで作業
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問題は、プロジェクトの中に10~12歳という未知の怪物がいることが意識から抜け落ちてしまうことだ。子供の心理や発達状況を加味できず、数字やタスクの進捗具合ばかりを見て判断してしまう。そしてプロジェクトが期待通りに進まなければ、「なぜできないの?」と怒りを爆発させてしまうのだ。

「最近では父親のほうがいい意味で諦めが早く『もうこの子は受験に向いていない』『そんなに無理をしなくてもいいんじゃない?』と、手綱を緩めることができる印象です」