「水溶性の食物繊維×発酵食品」が効果的
野菜や穀物に多く含まれる食物繊維は、これら腸内細菌の「エサ」となる。
細菌は食物繊維を分解する過程で、「短鎖脂肪酸(SCFA)」と呼ばれる有用な成分をつくり出す。なかでも代表的なのが酪酸であり、これは腸の上皮細胞にとって重要なエネルギー源であるだけでなく、炎症を抑え、免疫のバランスを整え、遺伝子発現の調節を通じて、がん抑制に関与する可能性が示唆されている。
この酪酸を増やすには、「水溶性の食物繊維」と「発酵食品」を組み合わせるのが効果的である。海藻、オーツ麦、大麦、果物、豆類といった水溶性食物繊維に、味噌、納豆、ヨーグルト、ぬか漬けなどの発酵食品を加えることで、酪酸が効率よく産生されやすい腸内環境が形成されると考えられる。こうした変化は、腸のバリア機能を保ち、有害物質が体内に侵入するのを抑える方向に働くだろう。
肉や脂肪の摂りすぎや、精製糖の多い菓子類を常食することは、腸内細菌のバランスを崩す可能性がある。その結果、腸管バリアが弱まり、細菌由来の成分(エンドトキシンなど)が血中に移行しやすくなり、慢性的な炎症状態を助長する危険性が指摘されている。
こうした「腸内フローラの乱れ」は、がんや糖尿病、動脈硬化など、さまざまな生活習慣病のリスクを高めることが、国内外の研究によって示されている。『Lancet』に発表された、「European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition(EPIC)研究」では、約52万人の対象者を調査した結果、食物繊維は大腸がんのリスクを25%低下させたと報告されている。
WCRF/AICRの報告によれば、食物繊維の摂取量が一日10g増えるごとに、大腸がんのリスクはおよそ10%ずつ低下することが示されている。つまり、腸内細菌が喜ぶ食材を毎日の食事に取り入れることが、「腸からがんを防ぐ」ための第一歩となるのである。
なにも特別な健康法ではなく、一汁三菜の中に発酵食品と野菜を欠かさない伝統的な日本食こそが、最新の科学が支持する「がん活」食なのだ。
日々の食卓が「がん活」に直結する
がんリスクと食事の関係を、科学的知見をもとに整理すると、図表1のようになる。
このように、食事とがんリスクの関係には単なる相関関係があるだけではなく、腸内細菌を介した代謝や炎症の調整など、分子レベル・生理レベルで関連性が説明できるようになってきた。
また、日本人に特徴的な食習慣(大豆・魚・発酵食品・塩分など)とがんリスクの関係も科学的に明らかになってきている。これらの成果は、がんリスクと食事には「統計的な関連」があるのみならず、まさに日々の食卓にこそ、「がん活」に直結する実践的な知恵があることを示している。



