「青魚の油」にはがんの予防効果がある
さらに、調理法にも工夫の余地がある。肉や魚を高温で焼くとヘテロサイクリックアミンや多環芳香族炭化水素といった発がん性物質が生じやすくなるが、たとえば低温で煮る、蒸す、あらかじめ下茹でしてから焼く、レモン汁やハーブ、オリーブオイルでマリネしてから調理する、などの方法によって、これらの有害物質の生成を抑えられるかもしれない。
本邦の研究でも、野菜や果物の摂取量が多い人ほど、消化器系のがんリスクが低い傾向が報告されており、WCRF/AICR報告でも、「毎日400g以上の野菜・果物摂取」が推奨されている。
がんリスクを抑える食事
②青魚
魚、とくに青魚は、日本人にはなじみの深い食材である。そこに多く含まれる脂質(n‐3系多価不飽和脂肪酸:EPAやDHA)は、がん予防においても注目されている。脂肪酸は体内で炎症を抑える働きをもち、慢性的な炎症を背景とする疾患、たとえば動脈硬化やがんのリスクを下げると推測されている。
欧米や日本で行われた複数の前向きコホート研究では、魚をよく食べる人ほど、大腸がんや乳がんの発症が少ない傾向が報告されている。米国の「Nurses' Health Study」や「Health Professionals Follow-Up Study」などの長期追跡調査でも、魚を週に数回摂取することが、総死亡率やがん死亡率の低下傾向と関連していることが示唆されている。
「週3回の魚食」でがんリスク低減
生理学的にも、EPAやDHAは炎症性サイトカインの産生を抑え、免疫細胞の働きを調整する作用を持つと考えられている。また、細胞膜の性状に影響を与え、酸化ストレスを軽減する方向に働くことで、DNA損傷や異常細胞の増殖を防ぐ方向に作用することが期待されている。
魚を主菜とする日本の食文化は、長寿と深く関わっていることが知られている。日本人を対象とした複数の疫学研究でも、魚介類をよく食べる人ほどがんによる死亡率が低い傾向が報告されている。たとえば、全国8万人を追跡した研究では、小魚を週3回以上食べる女性では、がんを含む全死亡リスクが低いことが示されている。
また、別のコホート研究でも、魚摂取量の多い群では大腸がんの発症リスクがやや低い傾向が確認されている。これらの結果は、魚に多く含まれるEPAやDHAといったn‐3系脂肪酸が、炎症を抑え、細胞の酸化ストレスを軽減することで、がんをはじめとする慢性疾患の予防に寄与していると考えられている。
一方で、魚を摂取する際にも注意点がある。揚げた魚や焦げの強い焼き魚は、調理時に発がん性物質が生じることがあるため、蒸す、煮る、軽く焼くといった調理法が望ましいとされている。
また、マグロなどの大型魚には食物連鎖により水銀が蓄積されているという問題もあるため、妊婦や子どもは摂取頻度に配慮する必要がある。総じて、週2~3回ほど、バランスよく適切に調理して魚を食べることが、がんを含めた慢性疾患の予防に役立つかもしれない。

