報じられなかった大事故

中国経済のバブル崩壊は宿命付けられたものである。資本主義的な経済活動が機能しないのは彼らの特質である。賄賂と収賄という伝統的な「中国の文化」が正常な発展を阻害しているのである。

宮崎正弘『地獄の中国』(ワニブックス)
宮崎正弘『地獄の中国』(ワニブックス)

2025年8月22日、黄河をまたぐ恰好で青海省に建設中だったアーチ型の橋梁が突如崩壊した。作業中の労働者ら12名が死亡、4名が行方不明となった。この大惨事、日本ではほとんど報じられなかった。

事故現場はチベットに近い青海省、全長1600メートルの高速鉄道(新幹線)の橋梁。2023年に着工し、2025年の8月中に連結する予定だった。橋のワイヤーが切れて100メートル余の橋梁部分が崩落した。

同年4月、ミャンマーで地震があり、ミャンマー第二の都市マンダレーなどに大きな被害がでた。この余波は隣のタイの首都に及んだ。

2025年のミャンマー地震後、崩壊したタイ国家監査院新本部
2025年のミャンマー地震後、崩壊したタイ国家監査院新本部(写真=Supanut Arunoprayote/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

バンコクで建設中の33階建て高層ビルが大音響とともに崩壊した。それは新築中のタイ情報省のビルで、中国ゼネコン大手の中鉄十局が請け負っていた。規格外の不良品の鉄筋が使われていたことが判明し、仕入れの誤魔化ごまかしと手抜き工事が明るみにでた。

しかし震源地から約1000キロも離れたバンコクである。確かにバンコクでは他にも高層ビルの外壁が損傷するなどの被害が目立ったが、建物そのものが崩落する事故は、この中国企業が建設していたビルだけだった。

不祥事を美談に仕立てる習近平

「これはまずい」と中国の政治プロパガンダ機関は大胆なすり替え作戦を開始した。メディアや国民の批判をかわし、誤魔化すのは中国の得意技。大規模な救援隊をミャンマーに送り込み、連日のように中国救援隊の活動を派手派手しく報道した。一方でビル倒壊のニュースを封殺した。

習近平は地震発生翌日に、「中国とミャンマーは苦楽を共にする運命共同体だ」とミン・アウン・フライン総司令官に見舞い電報を送り、「必要な援助をすぐに提供する」と表明した。中国政府はミャンマーに救助隊員や地震専門家ら400人からなる特別チームを派遣し、体制御用のメディアも多数同行した。

なにはともあれ政治宣伝が優先するのだ。彼らにとって“宣伝”は政治の枢要な機能を果たす。この場合の「政治宣伝」とは嘘放送を意味する。

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