「完全に困窮していた」稲垣家

明治維新で武士の身分は失われた。禄を失った元士族たちは、慣れない商売を始めたり、日雇いの仕事に出たり、なんとか食いつないでいる。プライドだけは高いが、懐は寒い。そんな元士族が松江には大勢いた。

その中で、稲垣家だけは娘が月給100円の高給取りの外国人の家に入った。そうなると、嫉妬、蔑み、そして密かな羨望が渦巻くようになっていたはずだ。

本当にそんなに楽で裕福な暮らしだったのだろうか。