結局、判断を早くするためには、体験の量を増やすのが1番です。それも失敗の体験を重ねたほうがいい。その点、私は65歳ですが、失敗の体験量なら世界一です。私は飲む・打つ・買う・バンバンの5拍子揃った男ですから、累計すれば、過去にものすごい金額の損をしてきています。だからちょっと見ただけで、「あ、これは損をするパターンだな。やめておこう」と即決できる。
早くに失敗しておけば、それだけ経験として豊かになる。つまり早い時点での失敗は、時間の先取りです。人間はなぜ失敗するのか、それは成長するためです。
私はiPhoneが発売されるや否や、真っ先に買いました。値段も見ませんでした。もちろん使い方など全然分かりません。だから最初は失敗続きです。送ったメールが届きません。それでも1つ失敗すれば、1つ使い方を覚える。今では誰よりもITツールを使いこなしています。どうせ最初は失敗するなら早く失敗したほうがいいです。
我が社ではiPadを全社員・パートタイマーに導入して、内定者にも持たせています。会社で買って支給するからといって、「仕事にしか使ってはいけない」などとケチなことは言いません。この手のITツールを社員に普及させるときのコツは、「いくらでも私用で使っていいよ」と言うことです。そうするとみんな喜んで、友だちや家族とメールのやり取りはするようになります。そうすると操作に慣れて、すぐにいろいろなアプリを使えるようになる。
これが武蔵野流です。武蔵野の役員は、私が言ったことを1日でできないと役員ではない。私が2013年に西野與一を役員に抜擢したのも、「素早く行動に移せるか」どうかを真っ先に見ました。なんといってもスピード第一です。
「正確さはどうでもいいから、まずやれ。やってから考えろ」
と口を酸っぱくして言っています。そこがお役所や古い体質の大企業とまったく違うところでしょう。
気軽にチャレンジして、どんどん失敗する。そうすると次に同じようなことがあったとき、すぐ判断できるようになる。
判断も仕事の一種ですから、判断がうまくなりたいなら、何度も同じ体験で判断してみるしかありません。仕事の質を高める方法は、回数を多くこなすことしかないのですから。
※本連載は『絶対に会社を潰さない 社長の時間術』(小山昇 著)からの抜粋です。