都議会でも煮え切らない答弁が続く

それ以外の区の場合、大田区など臨海斎場を共同運営する5区は区民の火葬にはそれなりの責任を持つが、東京博善に関する権限はなく、他の区も同様である。つまり都も区も、たとえ東京博善に「火葬料金の高値批判」があったとしても、積極的に動く動機がないのだ。

都議会で問題になったこともある。2024年第1回定例会(2月29日)で、慶野信一都議は東京23区民の費用負担が大きく、23区の各区議会においては、火葬料金の認可制度化を国に求める陳情を採択する動きが広がっていることを踏まえつつ、こう述べた。

「公共福祉のさらなる増進のために、区部における新たな公営火葬場の設置に向けた取組が急務であると考えます。都の見解を求めます」

保健医療局長は次のように回答した。

「現在、区部の公営火葬場では、火葬炉の増設等により火葬可能数を増やすことが計画されており、今後、こうした動向等について区と情報共有し、意見交換してまいります」

また、同年3月13日の都議会予算特別委員会で、関口健太郎都議は東京博善が約70%の火葬を執り行っているために、火葬料金が上がっても区民が値上げを受け入れざるを得ない状況を踏まえ、「火葬場が民間事業に依存している現状をどう考えているか」と質した。

保健医療局長の答えは同じだった。「火葬炉の増設等により、火葬可能数を増やすことが計画されて」いるというのである。都として指導力を発揮する考えはなく、瑞江や臨海に任せてきた。

東京、新宿、高層ビル、都市の風景
写真=iStock.com/blew_i
※写真はイメージです

東京博善は「競争は大歓迎」と言うが…

一方、収益拡大の道筋をつけた広済堂ホールディングスは社長交代が続いた。葬祭を「公益(火葬)」と「収益(式場と葬儀業)」と「資産コンサルティング(相続など)」に分けて公益批判をかわした黒澤洋史の後任はプロ経営者の前川雅彦が1年だけ務め、2025年6月からはみずほ銀行を経て広済堂HD入りした常盤誠が指揮を執っている。

また東京博善では、廣済堂プロパーで情報システム部門を中心にキャリアを積んだ野口龍馬が2025年6月、和田翔雄に替わって社長となった。社長は替わっても羅怡文が引き続き広済堂ホールディングス代表取締役会長として方向性を定めるのは変わらない。

羅は注文の多い火葬業に対し、「もちろん火葬は独占の弊害があってはならず、火葬場の新設計画があれば支援して切磋琢磨したいぐらいです」と、競える環境となることをむしろ期待しているという。ただ羅は、家電量販、小売り、観光、教育などのグループ企業を一代で築き上げた起業家であり、経営判断の基本は廣済堂を取りに行った時と同じ「経済合理性」である。公共性は意識しつつも合理的ではない慣行は認めない。