都心へのアクセスにこだわる必要もない
本当ならば、定年後に生活する家については別のマーケットが存在してもよいと私は考えています。若いころに似合った服でも歳をとると恥ずかしくて着ることができないのと同様に、家も歳とともに「似合う」家が変わってくるのではないでしょうか。
夫婦だけで暮らすなら住戸面積はもう少し狭くてもよいと考えれば、小さくて価格も安い家に買い替えれば、大きな資金負担なく買い替えることが可能になります。
住む場所はどうでしょうか。これまでは会社に通勤するのに便利な街を選んできてはいませんか。都心ターミナル駅まで、あまり時間をかけることなくアクセスできることが家選びで優先順位が高かったはずです。
もちろん定年後であっても都心にアクセスしやすい、あるいは都心に住むことの効用は高いものがあります。でも毎日「通う」必要もない、出勤時間が決まっていて時間に間に合うように「急ぐ」必要もない。電車が混んでいる時間帯に無理に乗車しなくてもよい。こんな生活になれば、今住んでいる街にこれからも拘り続ける必要はありません。地元とのお付き合いが深い人は別ですが、マンション暮らしで、夫婦共働きで頑張ってきたような世帯の多くは、街に愛着がないかぎり、将来の自分たちの住まいとして、選択肢を広げてもよいのではないでしょうか。
55歳からの家選びで重要な視点
歳をとると行動半径も狭くなりがちです。外に出かける積極的な理由をつくるには、自分たちの住む街が、日々生活をする舞台としてどんな魅力があるのかをよくチェックする必要があります。
自然と親しみたい人は、今より郊外に移るのもありです。都会暮らしにどっぷりとつかりたい人は住戸面積を犠牲にしてでも都心に住むというのも悪くないでしょう。これからのライフスタイルはこれまでの通勤主体のライフスタイルとはかなり異なったものとなるはず。このことを自覚して、55歳からの家選びを考えたいものです。
おそらく本書をお読みの多くの方は、まだまだ会社に通わなければならない、ローンが残っている、自分のライフスタイルなんてわからない、という人が多いでしょう。それでも、今から準備は必要です。
私の周りでも、定年になるまでしゃかりきに働いて、いざ「明日から出社に及ばず」と言い渡され、始めの3カ月は「毎日が日曜日」を満喫していたはずが、半年後にもなるともうやることが見つからず、奥さまにも邪険にされたといって、ブーブー愚痴る人がいます。周到な準備を怠ってきたからです。
実際には100歳まで生きるかどうかはわかりませんが、第2の人生ならぬ第3の人生計画が必要なのがこれからの私たちです。そうした意味で、家は買ってしまえば終わりなのではなく、とりわけ55歳から先の人生にふさわしい家選びが必要となるのです。

