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上釜社長のある1日

名言、箴言の類を手帳にしたためている人もいるようですが、そういうものも私の手帳とは無縁です。

趣味の中国古典や映画で感銘を受けた言葉やセリフを手帳に書き写すこともやっていない。ついでながら、私の座右の銘「志有る者は事竟に成る」は、額に入れて社長室に飾ってあります。

TODOリストも手帳には書かず、使用済みのコピー用紙の裏に書いて、手帳に挟んでおくだけです。1日が終わったら会社でシュレッダーにかければ、機密が漏れることもありません。

スケジュール管理は秘書が行っています。毎日の予定は秘書に尋ねるか、必要な部分をプリントアウトしてもらえば事足りるので、これも、とくに自分の手帳を使わなくても大丈夫です。

秘書からもらったものは日曜日にじっと見て「ここが空いている」「この日をどう詰めるか」と考え、月曜日に指示を出します。資料を作成してもらうときもグラフのイメージを手書きで書いて渡しています。

手帳とは直接関係ありませんが、秘書が優秀だと生産性は格段に上がります。その意味では中国でバイスプレジデントをしていたとき、10年にわたり私の秘書を務めてくれた女性は、秘書の鑑でした。

いつどこで誰と会うかといったスケジュールの調整はもとより、会合のためのレストランの予約や、お客さんの送迎の車の手配など、万事において抜かりがないのです。

とくに夜会食が終わってお客さんを送りだすときに車が来ていないと、中国では非常に失礼にあたるのですが、彼女はドライバーが遅れることまで見越して手配をしてくれるので、そういうことはまずありませんでした。

また、約束の時間の前に私が突然体調を崩したときは、相手に迷惑をかけないようにうまく取り計らってくれる。まさに至れり尽くせりです。

そんな秘書の優秀さは、当然相手にも伝わります。わざわざ彼女にお土産を持ってきていただくくらい、お客さんからも信頼されていた。それなのに決して偉そうにせず、ちゃんと自分の分をわきまえているのです。彼女のような人を、真のプロと呼ぶのでしょう。