子どもを工業製品のように扱う親たち
【養老】なんかちょっとおかしいんですよね。ものすごい勢いでペットが増えてるでしょう。うちの娘なんかも、子どもはいないけど猫を可愛がってますからね。
【内田】子どもは謎なんです。ミステリーなんです。謎の存在なので、自分の思い通りになるはずがない。思い通りに育てようとするからつらいんじゃないですか。
【養老】コンピューターの世界の典型ですけど、“ああすればこうなる”ということが成立しない状況を嫌うんですよね。子育てはそうならないから。経済なんかもそうでしょう。これだけ元手をかけて、これだけ売れればこれだけ儲かる……要するに「ああすればこうなる」という論理でおおかたの世界は動いている。
それに対して、子育てはそれに反するでしょう。どんなに労力をかけても、ドラ息子ができるかもしれないし、放っておいても本当にいい子ができるかもしれない。本当はわからないんだ。人生ってそういうもんだという前提が消えてしまっているんです。
【内田】教育もそうですけども、子どもを工業製品みたいな捉え方をする傾向が強いですね。家が「ファクトリー」で、子どもが「プロダクト」だと。ファクトリーが優秀であれば優秀なプロダクトができるというような「工場」のメタファーで考える。でも、工場って、工程が100%管理できるという前提じゃないですか。
「モンスターペアレンツ」というのは子どもの生産工程を親や教師が100%管理できるんだと考えているんだと思います。子どもが思い通りに育たないのは、工程管理が悪いからだと考える。だから、クレームをつける。子どもの成長なんか管理できませんし、すべきでもないのに。
肥料をやりすぎた作物は枯れる
僕が生まれた頃はまだ農業従事者が人口の20%近いという時代でしたから、学校教育も育児も農業の比喩で語られました。種を蒔いて水やって、肥料をやって、あとは待つだけ。台風が来るか、病虫害があるか、日照りになるか、そんなことは人間の手が届かない。
子育ても農業と同じで、人間が管理できるのは全工程の2割くらいで、後は「自然任せ」。収穫期が来ると、畑にトマトができたり、キュウリができたり、カボチャができたりする。それは「天の恵み」ですから、ありがたく頂く。「注文と違う」とか「納期に遅れた」とか文句を言うような人はいませんよ。
【養老】肥料やりすぎると枯れるんです。

