「日常生活」を丸ごとAI化する

第1章:ハイセンスは何をAI化・AIエージェント化しているのか

ハイセンスのAI戦略を理解するうえで、最初に押さえておくべき点ははっきりしている。同社がAI化している対象は、冷蔵庫や洗濯機といった個々の家電そのものではない。AIの対象になっているのは、家庭の中で毎日、ほとんど無意識のうちに繰り返されている「生活の業務」や「判断の連鎖」そのものである。

私たちは日常生活の中で、驚くほど多くの判断を行っている。食事の準備を始めるタイミング、洗濯を今回すか後にするか、空調をどの程度効かせるか、電気代をどこまで気にするか。これらは一つひとつが些細で、深く考えずに行われていることが多い。しかし、こうした判断が積み重なることで、生活には「失敗」や「無駄」や「小さなストレス」が生まれる。洗濯が乾ききらずにやり直すことになったり、料理の段取りがうまくいかず慌てたり、空調が合わずに何度もリモコンに手を伸ばしたりする。

ハイセンスがAIで引き受けようとしているのは、まさにこの判断の積み重ねである。そのために同社が採っているアプローチは、家庭内の主要な生活領域を、明確な「業務単位」として切り出し、それぞれをAIエージェントとして設計するというものだ。まず、調理と食に関わる領域である。