たった1カ月で事業化できることも

運営費用の内訳
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運営費用の内訳

製造業が、工場内の遊休地を「植物工場」に転用する例が目立ってきている。JFEホールディングスやオリンパスのような大手に加え、地方の中堅の鉄鋼、繊維、電子機器メーカーなどが次々と植物工場に参入し、レタスやサラダ菜などの葉物野菜やトマトなどを生産している。

屋内で水や光、養分などの環境を管理しながら野菜を生産する植物工場は、三菱総合研究所が設立した「植物工場研究会」が把握しているだけで、全国に50カ所ほどある。

「製造業と野菜」とは意外な組み合わせに見えるが、市場のニーズと製造業側の事情の双方を見ると納得がいくのではないか。

食の安全に関心が集まる中、国産野菜へのニーズも高まっており、その一方で高齢化により農業の担い手が減少。ビジネスチャンスが生まれている。

また、農業はこれまで効率化の面では後れをとっていた分野である。製造業側から見れば、これまで培ってきた「均質な製品を効率良く計画的に生産するノウハウ」を活用できるのだ。

製造業を取り巻く環境の変化も理由の一つである。最近、土地は「買う」ものから「借りる」ものに変化しており、国内事業縮小などで生まれた遊休地を転売することが難しくなっている。そのため遊休地やライン縮小による空きスペースを、植物工場に転用しているのである。

運営上のメリットもある。植物工場は立地場所を選ばず、比較的設置が簡単。プレハブ程度の建物に、棚、水槽、水の循環設備とエアコンや電気などがあれば十分なため、3カ月程度、早ければ1カ月で設置できる。オリンパスの場合は、工場敷地内にある従業員用体育館をそのまま植物工場に衣替えした。ほかにも、半導体工場の一角にあったクリーンルーム設備を改装し、無農薬で雑菌の少ない野菜を生産するプラントを設置したケースなどがある。