アメリカのポチを演じてきた日本は?
尖閣諸島周辺では、中国による領海侵犯や領空侵犯が続いている。日本側もスクランブルで戦闘機を飛ばしているが、偶発的な衝突が起こる可能性は十分ある。たとえば偶発衝突から戦闘状態になって中国から大量の艦隊が日本に向かってきたとしよう。尖閣上陸はおろか、沖縄占領まであるかもしれない。
そうしたことが予見される状況下で、日本の領海の外で米第7艦隊が中国艦隊とドンパチを始めた場合、自衛隊はその時点から参戦できるだろうか。
集団的自衛権の行使を容認していれば、これは可能になる。集団的自衛権の行使が認められなければ、日本の領海内に入るまでは手が出せないし、領海内に入ったとしても拡声器で「出て行け」と叫ぶか、水鉄砲を浴びせるしかない。このような“ケースA”では日本の世論も「集団的自衛権を行使して、米軍と一緒に戦うべし」という方向になると思う。問題はシリアのような“ケースB”だ。
日本と縁もゆかりもないシリアに、直接攻撃を受けていない同盟国のアメリカが武力行使をしようとしている。NATОの同盟国の同調を得られずに躊躇しているアメリカから「日本も名乗り出てくれ。1つ借りをつくらせてくれ」と言われたら、どうするか――。アメリカのポチを演じてきた日本政府としては、「NО」と言うのは難しいだろう。想像し難いだろうが、集団的自衛権ではそこまで試されるのだ。
現時点ではロシアの仲介もあってシリア攻撃は始まっていないが、今後の情勢は予断を許さない。集団的自衛権の問題と絡めて考えたとき、シリア問題は決して遠い話ではない。
(小川 剛=構成 AP・ロイター/AFLO=写真)