12月6日、中国軍が自衛隊機に向けてレーダー照射を行った。一体何が目的なのか。軍事ジャーナリストの宮田敦司氏は「中国はあくまで『武力行使ではない』と言い張るが、それ自体が戦略の一部だ。武力衝突には発展させないまま国家の主権を脅かす巧妙なやり方で、日本の安全保障は脅かされている」という――。
中国戦闘機による自衛隊機へのレーダー照射
2025年12月6日に沖縄本島の公海上空で、中国空母「遼寧」を発艦した戦闘機が自衛隊機に向かって2度にわたりレーダー照射を行った。経緯をめぐる日中双方の主張は食い違い、応酬が続いている。
高市早苗首相の「台湾有事発言」を発端に、日中関係の緊張は高まっている。そんな中で起きた今回のレーダー照射は、「空で起きたグレーゾーン事態」といえる。
「グレーゾーン事態」とは安全保障に関する用語の一種で、武力攻撃とは認められないが、平時よりも緊張を高める曖昧(グレー)な侵害行為を指す。武力攻撃は「国家の意思に基づく組織的、計画的な武力の行使」(内閣法制局)と定義されるが、これに至らない場合、自衛隊は反撃のために武力を行使することはできない。
グレーゾーン事態が厄介なのは、ひとつの行動が決して偶発的なものではなく、長期的に相手の反応を鈍らせ、現状を固定化する戦略の一部だからだ。日本を取り巻く安全保障環境では、武力衝突に至らないまま国家の主権や行動の自由が侵食されるグレーゾーン事態が常態化している。

