肖像権を「生成AI」利用可能にしたアイドル
AiHUBによる著作権クリアな国産画像生成モデル「oboro:」は、個社別に合意された過去データを学習データとして用い、あくまでその会社の内部のみで制作工程の簡略化などに用いられるものである。
元ガイナックス副社長の井上博明氏をエグゼクティブ・プロデューサーに擁し、インハウスのAIクリエイターが各種版権元と1on1で生成AIを使った展開を実証実験中である。すでにタカラトミー社のアニメ・ベイブレードのMV制作を行ったり、円谷プロダクションとの提携を発表しており、OVA初期からオリジナル作品を多数制作しているAICと過去のアニメアーカイブを使った利活用を検討中だ。
現在生成AIを使った長編アニメをテレビ地上波で放送するプロジェクトを進めており、中身をみれば人手のアニメとAIのアニメでこれほどクオリティが近づけるのか、ということも顕在化してくることだろう。
AiHUBでCMO(チーフマーケティングオフィサー)として活躍するタレント・起業家「くりえみ」氏は、アイドルから転身しTech業界に足を踏み入れた異色の経歴だ。
SNSフォロワー数270万人、自分自身の肖像をSoraでパブリック利用を解禁し、発表から1カ月あまりでおよそ4000作品の肖像が利用され、生成AIを使って彼女の水着姿・コスプレ姿が作られ続けている。
ディズニーの発表の一歩先を行く取り組み
「著作権を公開利用する」ということは、すなわちUGC(ユーザージェネレイテッドコンテンツ)の大海の中に肖像を投げ出すリスクと引き換えに(どう利用されるかわからない、肖像のブランドを傷つけられるケースもあるだろう)、アマチュアクリエイターたちのボランティアな創作意欲を引き立て、想像しなかった活用方法を発見する新たな創作手段にもなりえる。
同社は来年早々にUGCコンテンツのみならず、商業IPの権利を追跡し、IPホルダーやクリエイターへの利益還元を実現する国産生成AIプラットフォーム「クリエイターワンダーランド」をリリースする予定だ。
このプラットフォームでは、「くりえみ」氏のIPを利用した、AIクリエイターを発掘するフィルムコンテストを皮切りに、様々なIPとコラボレーションを行っていく。タレントの肖像や声を取り扱うという意味では、今回のディズニーの発表の一歩先を行く取り組みだ。
そしてそこには日本のIPとのコラボを模索する海外大手AI会社からの関心が高まっている。「創作のサンドボックス」に積極的に参加することで、それ自体が海外勢への対抗軸となったり交渉を有利に進めることも可能になっていくだろう。

