定年後に後悔「50代までにしておくべきだった」こと

前述の総務省「家計費調査」では60~64歳の2人以上世帯の月平均支出は約45万円だったので、20万円では確かに生活が苦しいだろう。

公的年金の繰り上げ受給とは、本来65歳からもらえる年金を前倒しで受給する制度であるが、その分、給付される年金額は65歳からの支給額よりも減るため、長生きすればするほど総支給額は損になる。結果、老後の生活費を削ることになるが、背に腹を代えられないのが現状なのだろう。

実はこれは今の50代以下にも待ち受けている現実だ。

前述の「金銭のゆとり」の調査では、65歳以上は「ゆとりある生活が送れている・日常の生活には困らない」が6~7割と多かったが、賃金の減額、退職金の減少、年金の目減りを想定すると、今後は生活を切り詰める人が増えることは間違いないと思われる。

同調査では60代以上に「50代で行っておくべきこと」も聞いている。これはいずれ50代を迎える40~30代もしかと確認したほうがいいかもしれない。

【図表】人生満足度 50代で行っておくべきこと別
出典=一般社団法人定年後研究所・公益財団法人ニッセイ聖隷健康福祉財団「60~70歳代 人生・仕事満足度調査~現役社員への教訓を紐解く~

トップ回答は「お金を貯める」(男性)で、
60~64歳 54.5%
65~69歳 54.2%

続いて「現職に集中」は、
60~64歳 44.4%
65~69歳 48.3%

だった。一方、70歳以上は「現職に集中」がトップとなっている。これは70歳以上は比較的生活にゆとりがあり、仕事に集中していれば、それなりの退職金と年金をもらえた恵まれた世代といえるかもしれない。

長く働くには、「健康が資本」になる

しかし、今の50代(以下)はお金を貯めることと、目の前の仕事に集中することの2つをやらないと60歳以降は危ういことを示唆している。

そのほかに60代が勧める50代に行っておくべきことでは、3番目と4番目に「スキル磨き」「幅広い学び」がランクしている。

キャリア論を専門とするある大学教授はシニア以降も働き続けるために次のように指摘する。

「自分を知ること、そして社会の構造を知った上で戦略を立てることが大事だ。自分がこうしたいと思っていることに立ちはだかる障害とは何か、持てる資源とは何かを考える。自分の持つ知識・技能を見える形にし、2つ以上の組み合わせ、たとえば英語力と経理とかの得意分野をつくり、組み合わせによってキャリアを築いていくことだ。さらに50代からも社内外のネットワークを広げることもキャリア形成にとっては極めて重要だ」

前出の調査では「現在の仕事をみつけたところ」も聞いているが、65~69歳は「定年後の継続雇用」「元の勤務先の関係」が多いが、70歳以上はトップが「家族・知人の紹介」となっている。まさにネットワーク力があるかないかも仕事先探しに有利に働く。

いずれにしても今の50代(以下)は60歳以降も体力・健康が続くまで働き続けることになるだろう。しかもパート・アルバイトで「収入ちょい足し」ではなく、フルタイムでガッツリ年金と同額ぐらいをカバーする収入がなければ生活できない時代になる。

そうなると、気をつけたいのは健康だ。

50歳から60歳にかけて体力が落ち、65歳以上は高血圧症、糖尿病、痛風など複数の持病を抱えている人も多い。厚労省の統計では65~74歳の3割が5種類以上の薬を服用している。

たとえば、老後のために節約をと食費を抑えようと、質をワンランク落とした安価な食材を選んだり、食事の回数を減らしたりすると、低栄養状態になり、筋肉が減少して日常生活に支障が出る「サルコペニア」に陥り、骨折しやすくなる。

さらに仕事以外は、自宅で過ごすことが多くなり、ひきこもり状態になると、介護の手前の「精神・心理的フレイル」(虚弱)に陥るリスクもある。

働くことはもちろん、健康管理を怠ると老後は悲惨な地獄絵図となりかねない。

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