※本稿は、毛内拡『読書する脳』(SB新書)の一部を再編集したものです。
ぼんやりしているときに活発化する脳の回路
脳の持つ特性としてご紹介したいのが、「デフォルトモードネットワーク(DMN)」という、非常に興味深い回路です。
DMNは、特定のタスクに注意を払っているときではなく、むしろ「安静時」や「ぼんやりしている時間」において活発になる、脳のアイドリング機能のようなものです。
従来の研究では、注意を必要とする作業を行う際にDMNの活動が低下することから「タスクネガティブネットワーク」とも呼ばれましたが、現代の脳科学ではむしろ、このネットワークが、多様な認知プロセスに積極的に関わっていることが明らかになっています。
具体的には、自分自身に関連した情報を処理する「自己言及的処理」、他者の心情や考えを推測したり共感したりする「社会認知」、過去の出来事を回想したり未来の計画を立てたりする「記憶と未来計画」などが含まれます。また、創造性を刺激する自由な空想や白昼夢も、DMNの働きによるものです。
こうした活動においてDMNは単なる受動的なネットワークではなく、自己や社会的な現実に関する主観的な体験を構築する、重要な役割を果たしているのです。
DMNの「厄介な特徴」
このDMNが活性化しているとき、私たちは特定のテーマや目的もなく思考があちこちにさまよってしまうことがあります。このような状態は「マインドワンダリング(心のさまよい)」と呼ばれます。皆さんも退屈な授業や会議の途中で、ふと週末の予定を考えたり、昔の思い出に浸ったりした経験があるのではないでしょうか。実はこれこそが、DMNが働いている証拠なのです。
しかし、このDMNも、使い方を間違えると厄介なことになります。マインドワンダリングには創造性や問題解決能力を促すというポジティブな役割もありますが、DMNが過剰に働くと、思考がネガティブな方向に向かい、過去の後悔や将来の不安がぐるぐると渦巻いてくる、いわゆる「反芻思考」を引き起こします。
この反芻思考が生じると、脳は慢性的に過活動状態となり、非常に疲弊しやすくなります。このような過活動状態が続くと、集中力の低下や感情の不安定化など、メンタルの不調として表れることがあります。


