パート募集が数カ月前からなくなった

実質賃金をプラスにするには、名目賃金を上げるか、インフレ率を下げるしかありません。完全失業率、有効求人倍率はまだ良い数字ですが、有効求人倍率は、コロナが明けるころには1.35倍まで上昇していたのが、最近では1.18倍まで低下しています。

まだまだ低くはありませんが、雇用の過熱感は薄らぎつつあります。私が代表を務める会社(東京都千代田区)の近くのファミリーレストランでも、パートさんの募集ポスターが数カ月前から貼られなくなっています。

正社員の賃上げは、来春まではありませんから、実質賃金を上げるには、インフレ率を下げるしかありません。そのためには、短期金利の上昇が必要で、政策金利を上昇させる必要があるのです。(図表2)

【図表2】政策金利の推移

では、日銀がどこまで政策金利を上げるのか。最近までは1%という意見が多かったのですが、インフレ率が高止まりしていることから、それ以上という意見も多く、1.5%と考えている人もいます。現状の3倍の金利になります。

高市政権は、インフレ時にインフレになるような政策を行っており、当然のことながらインフレは助長されがちです。アベノミクス初期のように、デフレで円高だったのとまったく状況が違うのに、アベノミクスと同じインフレ政策をとっています。

また、高止まりしているコメ価格についても、「おこめ券」という、価格維持のためとしか思えない政策をとり、いずれにしてもインフレが収まるにはかなりの時間がかかると考えられます。

高市政権発足以降、円安が進んでいることも輸入物価の上昇を通じてインフレを助長します。短期金利が上がると、企業の短期での借入金利も上昇しますし、変動金利で住宅ローンを借りている人ももちろん影響が出ます。返済額が上がる、家計負担は確実にアップします。金融資産、とくに預貯金を持っている人には恩恵ですが、資産は高齢者のほうが潤沢で、現役世代には金利アップは逆風となることは多いでしょう。

長期金利も上昇する

一方、見逃せないのは長期金利も急上昇していることです。今年初めに1.2%台だった10年国債利回りは、高市政権誕生で1.7%を超え、それが、11月に入り1.8%、1.9%をあっという間に超え、この原稿を書いている時点では、1.96%まで上がり、2%目前です。2%超を予測する人も少なくありません。

これは、高市首相が「責任ある積極財政」を掲げながら「責任ある」のほうはあまり意識されず、積極財政だけが前面に出て、財政悪化懸念から国債の増発が懸念され、金利が高騰しているのです。

長期金利の高騰は、企業の金利負担を増やし、設備投資意欲を減退させます。また、これから住宅を購入しようとする人の固定での住宅ローン金利負担を上げることとなります。ただし、新しく家を買う人には少し朗報があります。