安倍政権が秋の臨時国会で国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案の成立を目指す中、霞が関の縄張り争いが活発化している。日本版NSCは外交・安全保障の司令塔。安倍晋三首相は、防衛、外交を中心とする情報をNSCの事務局に当たる国家安全保障局に集め、外交・安保政策を主導する方針だ。

「情報が集約される国家安全保障局の局長は外務省が握りそうです。安倍首相は外務省と関係が深い。齋木昭隆事務次官は、安倍氏が小泉内閣の官房副長官時代、拉致問題解決でともに汗を流した間柄。また齋木氏は、安倍氏の父親の故・晋太郎元外相の秘書官。思想的にも安倍氏と近く、安倍氏の盟友中の盟友。外交・安全保障が得意な安倍首相は、齋木氏をはじめとする外務省との関係を最も重視していますから」(外務省関係者)

すでに安倍首相は、内閣法制局長官に外務省出身の小松一郎元駐仏大使を抜擢。小松氏も、安倍氏が集団的自衛権に関わる憲法解釈の変更を目指していることについて、「首相の問題意識は理解している」と発言するなど、首相と外務省の二人三脚ぶりは鮮明だ。

また外務省は安倍政権の鬼門になりかねないTPP(環太平洋パートナーシップ)交渉も主導しており、もしNSCが、予定通り来春発足した場合、霞が関の実権は外務省が握ることになりそうだ。

これに慌てているのが警察庁だ。安倍内閣の官房副長官(事務)や危機管理監、拉致対策本部事務局長ポストを握り、わが世の春を謳歌してきたが、NSC発足で外務省との力関係逆転は必至。危機感を募らせた警察庁が、自身に有利になる情報をマスコミにリークし始めたという。

「8月30日付朝日新聞が『内閣情報局新設へ』と大々的に報じた。朝日によると、NSC設置の一方、情報・危機管理体制も見直し、その一環として警察が握ってきた内閣情報調査室(内調)を衣替えして内閣情報局を新設、トップに内閣情報監を新設するという。だが実際は、従来の内閣情報官を内閣情報監に格上げすることが決まっている程度。政府内では“内閣情報局なんて聞いてないぞ。警察が握っている内調を昇格して外務省に対抗するつもりなのだろう”という声が上がっています」(全国紙政治部デスク)

朝日報道に対し、安倍首相は「まだ何も決まっていない」と一言。霞が関の主導権争いはこれからが本番だ。

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