棄捐令で「理」も破綻

また、武士を対象とした「文武奨励」(学問と武道の両立)、「学問吟味」(学力試験)などの風紀引き締め策も、厄介だった。当時の江戸には無役(役に就いていない)の貧乏旗本・御家人が少なからずいたが、彼らは生活に困窮しており、「文武」「学問」などを強要されても、空々しく耳に響いたに違いない。

暮らしに窮した武士を救済するため、定信は棄捐令きえんれいを発した。武士たちの借金帳消しを命じる法令である。

債権者は札差ふださしと呼ばれる金融業者で、武士が給金として受け取る米を担保に金を貸していた。定信は札差に債権放棄や利率引き下げを命じ、帳消しとなった債権総額は180万両にのぼった。小躍りして喜んだ武士もいたというから、武家社会にとっては「光」といえる。