某大手セルフ式コーヒーチェーンの数字を参考に、コンビニコーヒーの原価を探ってみよう。コーヒー豆を自家焙煎し、国内に約1000店舗を展開しているこのチェーンの原価率は18%とされる。コンビニは、豆を商社から仕入れ、焙煎をAGFやUCCといった専門企業に委託しているため原価率はこれより高くなるが、店舗数は桁違いに多い。仕入れ規模を考えると20%台前半の数字、いや、20%を切る数字も不可能ではないだろう。

セルフ方式を採用している「セブンカフェ」のコーヒーの値段は100円。仮に原価率を20%と想定しても、1杯売れば80円の粗利が転がり込む。1日80杯のペースで販売すると、1店あたりの粗利は年間で約230万円。全店(約1万5500店)への導入が実現すれば、淹れたてコーヒー単体での粗利合計は約360億円に及ぶ。

「セブンカフェ」導入にあたり、セブン-イレブンは富士電機と共同で1杯ずつ豆をひいてドリップするマシンを開発しているが、このマシンのコストは従来型エスプレッソマシンの約4分の1程度。イニシャルコストを徹底的に抑えた。

ロス率も食品としては例外的に低い。1杯ずつコーヒーを淹れるため、オーダーミスさえなければ廃棄はゼロだ。

缶コーヒーやチルドコーヒーへの影響も思いのほか出ていない。「淹れたてコーヒーのぶんだけ売り上げがプラスになった」というセブン-イレブンに対して、他チェーンは「影響はある」と認めるものの、その程度は「多少」。プラス効果のほうが断然大きい。

コーヒーは、コンビニの次の成長モデルをつくるキラーコンテンツでもある。コンビニの売り上げを過去5年で20%以上も押し上げたタバコの勢いは一段落した。総売上高の25~30%を占める主要商材となったタバコも、今後は喫煙人口と比例して売り上げ減が予想される。かといって弁当・惣菜のこれ以上の大きな伸びは期待しづらい。新たな「金脈」がほしいコンビニにとって、淹れたてコーヒーは導入すれば必ず売れる、しかも粗利が稼げる有望商品だ。

「認知度を上げるためエリアごとに導入を図っていますが、未導入のエリアからは『早くこちらにも入れて』との声が多数寄せられている。他社と協力体制を取りながら、氷やコーヒー豆、機械の調達を急ぎ、8月末までに全店導入を実現させたい」(セブン-イレブン・ジャパン FF・デイリー部 FF・惣菜シニアマーチャンダイザー・和瀬田純子氏談/8月上旬時点)