所得によって異なる食材選び
コロナ禍で積み上がっていた貯蓄の一部が消費に向かった可能性がある。一方、所得が少ない世帯は使えるお金は増えたのに消費は大きく減った。暮らしに欠かせない商品ほど値上がりが大きく、必需品以外に使うお金を節約しているためだ。
スーパーマーケットのメイン顧客は中間所得層だった。だが中間所得層の減少と低所得者層の増加は企業の営業政策に影響を与える。原材料高騰で値上げが相次ぐ中、仕入れや物流などの効率化でメリハリをつけた価格政策や品揃えをしていかないと、生活者からの支持を得にくい構造になっているのだ。
家計調査を詳しく見ると、所得によって食材の選好に違いが見られる。
たとえば牛肉は、所得が高いほど購入量が多い。2023年実績では、年収880万円以上の高所得世帯は牛肉の年間購入量が約6.2キログラムに達し、高品質な牛肉を求める傾向がある。これに対し、年収213万円未満の低所得世帯では年間購入量が約4.8キログラムにとどまり、価格を重視する傾向が強い。
高所得者ほどスパゲッティを選ぶ
同じ麺でも、所得が高いほどスパゲッティ(乾麺)の購入量が多く、所得が低いほどうどん・そばの購入量が多い。高所得層の年間購入量がスパゲッティ約4キログラム、うどん・そば約2.4キログラムであるのに対し、低所得層はスパゲッティ約2キログラム、うどん・そば約3.2キログラムと逆転が見られる。
うどんやそばはほかの食材に比べてコストが低く、家計に優しい選択肢だ。スパゲッティはソースや具材が必要なため全体のコストが高くなり、所得が高い世帯での購入量が多くなると考えられる。
所得によって食材の選好に違いが見られることから、スーパーマーケットはターゲットとする顧客層に応じた商品ラインナップや販売促進戦略を考える必要がある。また、所得層ごとの消費傾向を踏まえた戦略を展開することで、顧客満足度を高め、売上を伸ばすことができるだろう。
たとえば高所得層向けには、品質や産地にこだわった商品の特集や試食イベントを開催することで、購買意欲を刺激する。一方、低所得層向けには、価格訴求型のセールやポイント還元キャンペーンを実施することで、コストパフォーマンスを重視する顧客のニーズに応えられるはずだ。


