※本稿は、白鳥和生『なぜ野菜売り場は入り口にあるのか』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
平均所得100万~400万円が全体の約4割
「1億総中流」といわれた日本だが、経済格差は確実に広がっている。年金生活者の増加も手伝って年収400万円以下の世帯が増える一方で、高級ブランドが多く入る百貨店の伊勢丹新宿店が2022年度から3年連続で過去最高の売上を達成するなど「飛び抜けた」富裕層が出現している現実がある。
厚生労働省によると、2023年の全世帯の平均所得は536万円で、ピークとなった1994年の664万円から大幅に減少している。所得別の内訳を見ると、最も多い層は100万円台と200万円台で、比較的低所得の層がほぼ同じ割合になっている。100万~400万円が全体の約4割を占め、全世帯平均に届かない世帯は6割以上にのぼる。
より生活実感に近い中央値(全世帯の所得を並べて真ん中の値)は410万円。30年前より100万円以上少なく、この10年間は大きな変化がない(*1)。
*1 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査」
世界と比べて見劣りする日本の賃金の伸び率
経済協力開発機構(OECD)の年間賃金データを見ても、物価を勘案した購買力平価ベースで米国は30年前の5割増、OECD平均が35%増なのに対し、日本は5%増にとどまる。また欧州委員会によると、日本の可処分所得(収入から税・社会保障費を差し引いた手取り)は2000年と比べて2023年は横ばい。米国(約2.6倍)や欧州(約1.6倍)と比べて大きく見劣りする(*2)。
*2 「OECD 雇用見通し 2024 国別報告書: 日本」OECD、2024年7月9日
2021年10月の衆院選で与野党が揃って提唱したのが「分厚い中間層の復活」だった。欧米に比べて日本の可処分所得の伸びが鈍いのは、収入が伸び悩んでいることと、社会保障負担が膨らんでいることの両面の理由がある。


