「らしさ」がファミコン世代を呼び戻した

では、位置情報ゲームとしての「ドラゴンクエストウォーク」は、「ポケモンGO」と比べてどのような強みを持つのか。筆者が実際にプレイして感じるのは、RPGゲームとしての「ゲームらしい体験を提供できている」ことではないだろうか。

プレイのメインとなる各章やイベントにはストーリーがあり、定期的なイベントでも10作以上の「ドラゴンクエスト」シリーズのナンバリングを追うことが多く、現に2025年12月時点でも、『I&II』(HD-2D版発売記念)のリメイクイベントを開催中だ。

「ポケモンGO」の場合はストーリーから「AR撮影」などのカジュアルな楽しみ方にシフトしているが、「ドラゴンクエストウォーク」の場合は「ドラゴンクエスト」の世界観を楽しみながらプレイする。

開発当時からそういった方針がしっかり感じられ、RPGゲームとしての「ドラゴンクエストウォーク」のファンを惹きつけているからこそ、かつてファミコン、PlayStationなどで楽しんでいたプレイヤーを、スマートフォンアプリの世界に呼ぶことができたのだろう。

また、過去に九州・北海道・仙台などで「リアルイベント」も開催されており、位置情報ゲームとしての「ドラゴンクエストウォーク」のイメージ向上に寄与している。

「ドラゴンクエストウォーク」をプレイする人々。仙台市開催のリアルウォーキングイベントにて
筆者撮影
「ドラゴンクエストウォーク」をプレイする人々。仙台市開催のリアルウォーキングイベントにて
ドラゴンクエストウォークの熊本県で開催されたリアルイベントにて
筆者撮影
「ドラゴンクエストウォーク」の熊本県で開催されたリアルイベントにて

「ユーザーの日常」に浸透する仕掛け

昔からのファンをスマートフォンアプリに呼べた……とはいえ、ドラゴンクエストウォークは「無料ダウンロード」であるがゆえに、それだけでは収入に繋がらない。原作の人気キャラクターや強力な武器を実装すれば“ガチャ”収益は上がるものの、過度な投入はゲームのバランスが崩れてしまう。

ここで、アイテム販売や“ガチャ”にこだわらない収益の秘訣が「ゲームプレイ以外への機能拡張」だ。ドラゴンクエストウォークは「カジノゲーム」(スロット・麻雀・ポーカーなど)や「もぐもぐの書」(食事記録・カロリー計算)など、歩いてモンスターを狩らなくても楽しめる機能が、細かく装備されている。

そして、これらのコンテンツには「広告」が入る。数十秒の「動画広告」を視聴することで、プレイヤーは課金せずともゲームを楽しめ、運営は手堅く広告収入を得ることができるのだ。

また、この「歩かなくてもアプリを開いてもらえる仕組み」は、ドラゴンクエストウォークそのものにも相乗効果を生み出す。「カジノゲーム」「食事記録」などの名目で毎日アプリを開く習慣が定着することで、プレイヤーは自然とメインコンテンツにも触れる機会が増えていく。

一度ログインすれば、新しいイベントやクエストの通知が目に入り、「せっかくだから少し歩いてみるか」という行動を促す。こうした日常への浸透が、結果的にゲーム本編への継続的なエンゲージメントを高め、課金意欲の高いコアユーザー層の維持にもつながっているのだ。