日本企業を動かすレジェンド級のトップリーダーたちは、多忙な日々のなかでも読書は欠かさなかった。彼らは本に何を求めて、没頭していたのか――。

生成AIに頼るほど「考える力」は衰える

一流の経営者が本を読むのは、「考えるため」です。人が読書をする理由はさまざまでしょう。エンターテインメントとして読む人もいれば、何かを勉強したくて知識を獲得するために読む人もいます。ただ、私の知る限り、一流の経営者が本を読む理由はそこにありません。

かつては情報の獲得を目的として読んでいた経営者もいたでしょう。インターネットの登場以前は、情報のソースが限られていたため、新聞や本に頼らざるをえませんでした。しかし、今はインターネットどころか生成AIが出てきました。それに伴い、情報を集めたり整理するだけなら本というソースの役割は縮小しつつあります。

ただ、生成AIにも弱点はあります。あまりにも効率がいいがゆえに、本の一番の機能である「考える」ことがおろそかになるのです。

考えるとはどういうことか。思考の重要な目的は2つあります。まず1つは論理です。

たとえば新聞やインターネットを見て、選挙で参政党が躍進したというニュースを読んだとします。参政党が躍進したのは事実です。なぜ参政党が躍進したのかという理由も、生成AIに質問すればいくらでも箇条書きで答えてくれます。

しかし、これらの情報は要素にすぎず、それらを知っていたとしても、考えたとはいえません。それに対して、論理は要素のつながりです。自分の頭の中で複数の断片的な情報をつなぎあわせて、「この現象は、いったいどういうことなのか」「これからどういうことになるんだろう」と論理を見つけたり展開させたときに、人は「考えた」といえるわけです。

思考の目的の2つ目は、本質を見極めることです。

さまざまな経営者をはたから見ていると、優れた経営者ほど「要するにこういうことだ」という本質についての理解の引き出しが多いことに気づかされます。

経営で直面する現象は具体的で、たくさんあります。しかもそれらは日々変化していく。みなさん非常に複雑な状況に向き合って経営しています。ただし、複雑に見えるのは、表に現れた一つひとつの具体的な現象だけに目が向いているからです。現象の背後にある本質まで遡れば、ものすごくシンプルです。優れた経営者は、その本質を見極めることに長けているのです。

一つひとつの具体的な現象をもぐら叩きのように対処するやり方をする経営者がいますが、どんなに優秀な人でも脳の処理能力には限界があって、いずれ目の前の複雑な現象に対応できなくなります。人間の脳の処理能力に制約があるのだから、それを限界以上に引き上げようとするのではなく、物事をシンプルにしていくことのほうが、経営者にはずっと大事です。