農地を持っていたら「ずっと続けていけるんですか」、古い借家だったら「入居が入ってないけど、どうするんですか」などと相手の問題点から攻める。

ただ、戸建て住宅と違い、同じ地区内でターゲットとなる地主の数は約200~300件に限られていた。だから、競合他社も気にしながら、同じ相手の自宅に何度も足を運ぶことになる。「この前来たばかりなのに」と嫌がられる。

「たいがい断られるのが常ですが、ある時期がくると、お客様は不思議とその問題に直面することになるんです。そのタイミングでお客様に当たれるか否かが、1番のポイントです」

5~6年目からは、アパート建設時にローンを組む金融機関やJAに融資の案件を持ち込み、先方からは土地利用を考えている人を紹介してもらう、というギブ&テークの営業スタイルに変わった。ここでの経験が、FPの資格取得を目指す1つのきっかけになった。

紹介とはいえ、動く金額が少なくないだけに、土地利用を勧めても地主の多くはたいてい慎重になる。彼らの相談相手は、銀行マンやJA関係者らだ。草場氏がFP1級に挑戦した動機の1つは、彼らの信用を得ることだった。

「銀行・JAの支店長クラスだったら、FPの2級は持っています。私の名刺にFP1級と書いてあったら、彼らが私を信用してくれて、地主さんに決断を促してくれるのでは、と考えていました」

05年に勉強を開始。親しくなった顧客の部下の女性と結婚したことも発奮材料だった。

「当時は帰宅が夜10時すぎ。接待で飲んだときは別として、夕食と風呂の後、最低1~2時間は勉強しました」

年2回行われる試験は日時が決まっている。それに合わせて勉強をスケジューリングし、「○日までに△章を終わらせる」と、時間ではなくテキストの章立てで区切りをつけた。予定が終わるまで続けるから、就寝は時に2時から3時すぎに及んだ。