究極の天才とはどんな人物だろう。北米で最も有名なジャーナリストの一人、マルコム・グラッドウェルさんは「アメリカで最も賢いと言われた男性はペーパーテストの得点や芸術の才能が優れていた。とくにクイズ番組での振る舞いは天才的だった」という――。(第2回)

※本稿は、マルコム・グラッドウェル『Outliers 思考と思考がつながる』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

黒板
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アメリカでもっとも賢い男

アメリカのテレビに『1vs.100』というクイズ番組がある。その2008年シーズンの5回目の放送で、クリストファー(クリス)・ランガンという名前の特別ゲストが登場した。

Chris Langan in 2017
Chris Langan in 2017(写真=Gtl12345/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

テレビ界では、『フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア(百万長者になりたい人は?)』という番組の驚異的な成功を受けて、数多くのクイズ番組が生まれた。『1vs.100』もそんな番組のひとつだ。

「モブ」と呼ばれる100人の一般人が出演し、週ごとに変わる特別ゲストとクイズ対決をする。

賞金は100万ドルだ。ゲストはたったひとりで、100人の敵よりもたくさんのクイズに正解しなければならない。その基準に照らせば、クリストファー・ランガンほどの適任者はなかなか見つからないだろう。

「今夜、モブは史上最強の敵と対決することになります」と、番組のナレーションが入る。

「ご紹介しましょう。人呼んでアメリカでもっとも賢い男、クリス・ランガンです」

そこでカメラがゆっくりと回り、がっしりした体格の50代の男性が画面に登場した。

アインシュタインよりもIQは45高い

「IQの平均は100といわれています」と、ナレーションは続ける。

「アインシュタインはIQ150でした。そしてクリスのIQは195。彼は現在、その驚異の頭脳を使って宇宙の理論を解き明かそうとしています。しかし、そのキングサイズの頭脳をもってしても、100人の挑戦を退けて、100万ドルを手に入れることなど、はたして可能なのでしょうか? 今夜の『1vs.100』で、その答えが明らかになります」

そして大きな拍手に迎えられ、ランガンがステージに登場する。

「この番組で勝つのに、そこまで高いIQがはたして必要なのでしょうか?」と、番組の司会者のボブ・サゲットは尋ねた。サゲットはおかしな目でランガンを見ている。まるで研究の検体か何かを見ているかのようだ。

「そうですね、実はむしろ障害になるかもしれないと考えています」と、ランガンは答えた。低く、確信に満ちた声だ。「IQの高い人は、何か特定の物事を深く考える傾向がある。些末さまつなことは無視するのです。でも、ここにいる人たちを見てみると……」。ランガンはそう言うと、モブに目を向けた。いたずらっぽく光るその目を見れば、彼がこの状況をどれほど滑稽だと思っているかがわかる。

「まあ、なんとかやれるでしょう」