AI企業の間で循環するマネー

米国でAI関連企業による投資が加速している。1月にOpenAIが5000億ドルのAIインフラ投資の計画である「スターゲート計画」を発表したことを皮切りに、アマゾンによる1000億ドル規模のデータセンター等の投資計画、マイクロソフトによる800億ドルのデータセンター投資計画が発表されるなどGAFAMの動きも激しくなった。

2025年7月22日、ワシントンD.C.の連邦準備銀行で開催された米連邦準備制度理事会(FRB)主催の「大手銀行の資本枠組みに関する統合的見直し会議」で講演するOpenAIのCEO、サム・アルトマン氏
写真=AFP/時事通信フォト
2025年7月22日、ワシントンD.C.の連邦準備銀行で開催された米連邦準備制度理事会(FRB)主催の「大手銀行の資本枠組みに関する統合的見直し会議」で講演するOpenAIのCEO、サム・アルトマン氏

なかでも、9月に明らかとなった、エヌビディアとOpenAIが共同で巨大なデータセンターを建設する案件は、「米テック企業の中だけでお金が循環しているのでは?」との疑問が出るほど注目を集めた。チップメーカーであるエヌビディアが、AIモデル開発企業のOpenAIに巨額投資し、OpenAIがその資金でデータセンターを構築、そこで必要となるGPUをエヌビディアに大量に発注するという流れだったからだ。

いずれにしても、巨大なAI投資の背景には、2022年11月のOpenAIによる生成AI「ChatGPT」一般公開から一定の期間を経て、AIインフラとして必要なデータセンターの建設競争が始まったことがある。トランプ政権もAI包括プランの中で、AI開発の規制を緩和し、先端AIモデルや半導体、クラウド技術の輸出を拡大する戦略を取る。また、資金面ではブラックロックなどの投資ファンドがサポートしている。ファンドは、テック企業が得意としないデータセンターの運用・保守などについても、そのノウハウを有する関連企業にサポートさせる体制を整えているとみられる。

米国経済の底堅さ、AI期待が支え

AI関連の堅調な投資拡大は、トランプ関税の逆風が吹く米国経済を下支えした。2025年前半の米国経済を振り返ると、米国の1~6月期の実質GDP成長率(前期比年率)は+1.1%であった。そのうち、AI関連の機械投資と建設投資と考えられるものは急増しており(図表1)、2025年上半期の成長率を+0.6%pt押し上げた。ソフトウェア投資も含めると、年前半の成長率の多くをAI関連が占めたと言っても過言ではない。

【図表1】AI関連投資(季調済年率換算、10億ドル)