投資信託の積立などの長期分散投資が投資の王道といわれる。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「投資で成功したいなら、長期分散投資にこだわらないほうがいい。その前にやってみるべきことがある」という――。
木製ブロックでNISAの文字
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対照的な理由で、投資を始めた2人

会社員のAさん、30歳。

これまで投資にはまったく興味がありませんでしたが、老後資金の不安にかられ、そして、金融機関からのNISAセールスに乗せられて、興味のないまま、半ば義務的に投資を始めました。

真面目なAさんは、投資を始めるにあたって本やセミナーで勉強をして、いわゆる「投資の王道」とされる長期分散投資を実践。そして投資実践後も、毎日1時間程度、まるで仕事のように、投資の勉強に費やしています。

そんな投資にかける時間的・労力的負担を重く感じ、また、資産の値動きにも精神的負担を感じるも、将来のためにやめるわけにはいかないと、頑張って続けています。その努力の甲斐もあって、1年間で10万円の利益を得ています。

一方、同じく会社員のBさん、30歳。

投資には興味を持ちつつも、仕事が忙しく、なかなか実践することができませんでしたが、最近、ようやく時間に余裕ができて、念願の投資を始めることができました。投資を実践する前から、投資雑誌等を読んでいたBさんは、以前から興味のあった個別銘柄を購入。

そして投資実践後も、以前から興味のあった会社なだけに、『会社四季報』や会社IRは随時チェックし、その事業内容や業績の推移をワクワクしながら見守っています。休日などは丸一日、そのような研究に没頭することもあり、こんな楽しいことを、これまでやってこなかったことを後悔しているくらいです。

しかし、その運用成果は振るわず、1年間で10万円の含み損が出ています。

成功しているのはどちら?

さて、そんな対照的なAさんとBさんですが、投資で成功しているのは、いったいどちらでしょうか? 数字だけを見れば、もちろん、10万円の利益が出ているAさんですよね。しかしAさんは、投資に費やす時間・労力を非常に負担に感じ、さも仕事のように感じています。

もし、投資を仕事と捉えれば、Aさんは1日1時間、投資に時間を費やし、それで年間10万円の利益ですから、時給換算だと300円足らず(10万円÷365時間)です。だとすれば、これはまったく割に合わない仕事であり、あり得ない条件での労働を強いられていることになります。

また、その精神的な負担も考慮すれば、Aさんにとって、投資は苦行とも言えるでしょう。

一方で、Bさんは投資を非常に楽しんでいます。休日などは丸一日、銘柄研究に没頭することもあるくらいですから、Bさんにとって投資とは、完全に趣味(レジャー)と言っても良いでしょう。