相続をすれば相続税が発生する。母の末期がんと父の認知症を経験した永峰英太郎さんは「相続税は対策をしないと高い税金が発生する。法改正もあり、知らないとせっかく行なっていた相続税対策も無効になってしまうから注意すべきだ」という――。

※本稿は、永峰英太郎『マイナス相続サバイバルガイド』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

一万円札の束
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相続税対策をしないと税金も労力もかかる

私の父の遺産は、基礎控除額をわずかに上回ったため、相続税が発生しました。その額は23万円でした。こうした事態になったのは、父が認知症になり、相続税対策をすることができなかったからです。相続税は、支払う額はもちろんですが、申告手続きの面倒さも相当なため、相続税対策は必須だと、肝に銘じてください。

まず、大前提として覚えておいてほしいのは、財産を減らそうとして、一気に贈与してしまえば、税率の高い贈与税が発生するということです。1000万円で177万円(父母から18歳以上の子への特例贈与)なのです。

この贈与税には、ある制度があります。それが「暦年課税制度」です。1月1日~12月31日までの1年間の贈与額を合計し、贈与税額を算出するというものですが、受ける側1人あたり年間110万円の非課税枠があり、贈与額が、この枠内であれば、贈与税の申告も必要ありません。この仕組みを利用した相続税対策が「暦年贈与」です。 

暦年贈与の改悪で相続税対策が無効に

暦年贈与は、不動産でも可能ですが、専門家に依頼しないと難しいため、基本的には、現金と預貯金で行っていきます。

暦年贈与の大きな利点は、相続人でなくても活用でき、人数制限もない点です。例えば、子ども2人と孫2人に贈与しても構わないのです。その場合、年間で440万円もの財産を目減りさせることができることになります。

なお、両親から別々に贈与を受けた場合も、受ける側の合計110万円までが非課税になります。一定の手続きによって、簡単に財産を移行できるため、暦年贈与は相続税対策の王道とされてきました。

しかしながら、今はそうともいえなくなっています。以前であれば、相続開始前3年以内に贈与された場合は、相続財産に加算されるというルールでしたが、その期間が、2024年1月1日から段階的に「7年以内」へと変更されたからです。つまり、暦年贈与開始後、7年以内に親が亡くなると、贈与した財産は相続財産に加算され、相続税対策は無効になってしまうのです。

ただし、孫への生前贈与は「7年以内」のルールは適用されません。通常、孫は法定相続人ではないからです。そのため、相続税対策として、孫に贈与するのは、良い戦略といえます。なお、遺言書によって、孫が贈与を受けたり、生命保険の受取人になった場合は、適用されます。