「男が育休なんて」──その発言は、“パタハラ”として問題視されることになるかもしれない。
今年6月、日本生命保険が男性職員全員に育休を取得させる取り組みを始めた。背景には、日本の男性の育児休暇取得率(1日の有給取得も含む)がたった1.89%という現状がある。
「イクメン」の名付け親でもある東レ経営研究所の渥美由喜主席コンサルタントは、育休取得をはじめ、男性の育児参加を阻むような言動を「パタニティハラスメント(パタハラ)」と呼ぶことを提唱している。「パタハラは職場風土が旧態依然とした業界(男性優位の業界)で起きやすいという特徴がある」と渥美氏は指摘する。
具体的なパタハラ発言とは、「なんで育休なんて取るんだ。キャリアが台無しになるぞ」「子どもを看病するのは女房の役割だろ」というのが典型例で、「男はこうあるべき」という価値観を男性上司が押しつけるのが特徴だ。
「すでに育児事由で不利益に処遇することは法律で禁止されている。かつては当たり前だった価値観が最近では当たり前ではなくなっていることを、社会経済環境の変化などからロジックとデータで丁寧に説明していかないと、なかなかなくならない」(渥美氏)
パタハラをしている人への対応は、「喧嘩両成敗という姿勢ではなく、加害者に厳重注意する毅然とした姿勢が必要。また、ひとつの職場で起きたことは別の職場でも起こりえるので、ケーススタディーとして管理職研修で引用するなど、管理職全体に周知することも大切だ」(渥美氏)。
(ライヴ・アート=図版作成)