エリートが見た参謀のリアルな実像
それまでも戦争の見通しや日本軍に対して悲観的で、日記に死を意識した言葉をたびたび吐き出していた林は、「参謀とは人柄を知らない時には、全く素晴らしく偉い人に思はれるのだが、近附けば近附くだけ嫌になるやうな人柄の人が多い。軍が国民と全く遊離してゐるといふ時の軍人の典型は参謀である。全くの利己主義、独善主義、そして傲慢、而も立身に対する極端なる希求。早く、こんな型の軍人の消去るべき日の来らんことを」(1945年7月6日)、「軍人の視界は前方にだけ向いてゐる。その癖何でも知ってゐると自信満満。危いことはこの上もない」(同年6月14日)と言って憚らない。
当時、彼もまた参謀部第一課の情報将校であったのだが、日記のなかでは、「考へる葦としての個人」(1944年5月27日)であり、「個人の真実を求める心を晦〔引用者注:晦ま〕さうとする何んな力にも負けてはならない。常に彼等を批判して自己の道を何処迄も守らねばならない、思索は唯一の武器」(1943年5月18日)と思い定めていたのであった。
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