※本稿は、井出洋介『教養としての麻雀』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
絶対的な正しさがないから決断力が磨かれる
麻雀は「偶然」に大きく左右されるゲームです。囲碁や将棋などの「完全情報ゲーム」とは違い、卓上でこれまで何が起きたのか、ここから何が起こるのか、それが完全には把握できない仕組みになっています。配牌から自摸の流れまで、他家の手牌がどのように変化してきたかは見られませんし、牌山に何が積んであるかは事前にわかりません。
とはいえ、他家の捨て牌などを参考にしながら、その手の中、山にある牌を推測することはできます。それが麻雀にとっての「読む」ということですね。さらにいえば、麻雀には様々な数学的な要素も関係してきます。点数計算も必要ですし、自分の持ち点、他家の持ち点に応じて、場面場面での振る舞い方も変わってきます。
上級者になるほど、自分の「読み」に「数学的な要素」を頭に入れながら「AとBとでどちらが得か」という打牌選択をしていくわけです。
麻雀は不完全情報ゲームですから、「絶対にこれが正しい」という選択はまずありません。常にいくつかの選択肢があり、状況に応じてそこから「こちらのほうが正しいのではないか」という道を選んでいくことになります。「決断力」が常に要求されているのです。
決断の良さが「協調性」を育てる
麻雀では決断するための時間はあまり与えられていません。囲碁や将棋のような一対一の勝負だったら待たせる相手は1人だけですが、麻雀は4人でやるものですからね。長考すれば3人に迷惑がかかる。プレーのリズムも悪くなり、ゲームが面白くなくなってしまいます。難しそうな手牌の時もほんの数秒で決断しなければなりません。決断が遅い打ち手は、自然と周りから嫌がられるようになり、卓を囲む機会も減っていくことでしょう。
さらにいえば、「決断よく早く打つ」という麻雀のマナーは、「協調性」を育成することにも役立ちます。麻雀は基本的には4人揃わないと成立しないので(3人麻雀もないわけではないのですが)、4人の息が合わないとゲームとして成立しませんからね。ましてや、ゲーム途中で抜けるなんて論外ですよね。
親子4人で卓を囲んでいた小学4年生くらいの時のことです。
絶好調だった私は他家を大きく引き離してトップに立っていたのですが、オーラスで姉に国士無双を振り込んでしまったのです。国士無双は麻雀ではもっとも点数が高い「役満」のひとつ。しかも姉は親だったので、48000点。生まれて初めての役満放銃でしたが、それまでダントツだったこともあり、悔しさを隠して「何とか払える点棒があって良かった」と言ってゲームを続けることができました。

