大きな企業ほど「配属リスク」がある
「就職活動を終えた後、この会社にインターンで来て、“3年後の自分”を強く想像するようになりました」
現在、同社で営業や広報を務める大橋哲也さんが言った。昨年、一橋大学を卒業した彼は、三菱電機の内定を辞退してテラモーターズに入社。もともと将来は起業をしたいという気持ちがあったと語る彼は、そのなかで続けた就職活動に違和感を常に抱いてきたと振り返る。
「OB訪問をしても、最初の3年間は研修的な仕事ばかりだと聞き、会社に入ることにわくわくできなかったんです。昔からある企業の多くは立派なコーポレートポリシーを持っていますが、面接のときにそれを言っても面接官はどこか冷めた言葉を返してくる。素晴らしい企業理念があっても、実際にはそれが言葉だけになっていることを感じ、こうした企業で自分が本当に成長できるのかと不安になったんです」
対してインターンで訪れたテラモーターズは、刺激に満ちた会社に感じられたという。同社の徳重徹社長は大手保険会社を経て渡米し、電動バイクの製造で「世界一」を目指すと豪語する人物。4畳半のスペースで8人もの社員が働く環境、社長の席の前には「日本発、世界的ベンチャーの創出」と目標が掲げられ、話をすれば事業の可能性や理念を誰もが熱っぽく語った。また、同社の東南アジアでの事業展開は、大学を卒業したばかりの新入社員であっても構わずに投入される形で行われていたのも魅力的だった。
「実はこの日本には起業家精神を持つ優秀な人材がたくさんいる」と徳重社長は語る。
「20代の社員にそこまで任せて大丈夫かとよく聞かれるけれど、あのソニーだって欧米で事業を立ち上げた1960年代を担ったのはみな20代でした。ところが、今の時代にもっとも優秀だとされる学生は、ほぼ全員が大企業に入ってしまっているんですね。大手の商社や銀行などで必要とされる『優秀な人材』はせいぜい1割か2割。8割以上の社員が本来は非常に優秀でありながら、その能力を活かせない仕事をしている。僕らのような企業がもっとたくさんあれば、その現状を変えることができるはずです」
この言葉通り、同社のベトナムでの事業を担当する林信吾さんは早稲田大学を卒業し、入社したわずか3カ月後にはベトナムでの市場立ち上げに従事し始めた。フィリピンに駐在する関鉄平さんもまた、慶応大学を卒業したばかりの23歳だ。関さんは三菱商事の内定を辞退し、同社への入社を決めている。