凋落していくパナソニックやシャープといった大企業。何をするのが、どこで誰と働くのが、「安定」なのか――。彼らの迷いと決断に迫った。
今、成長していることこそが「安定」
新宿区の甲州街道沿いのオフィスビルに入居する「フォルシア」もまた、「社員の成長」に対して意識的なベンチャー企業の1つだろう。
JALやANA、ニッセンなどのサイト内検索システムを開発する同社は今年、東京大学大学院の卒業生3人を含む9人を新卒で採用した。
「私たちのような業界でもっとも重要なのはスピードです。ところが、どんなに優秀な人でも、すでに仕組みのできあがった企業に長くいると、スピード感になかなか適応できなくなってしまう」と社長の屋代浩子さんは語る。
「その意味では若い人たちの感性は、私たちの会社にとって武器そのものです。ただ、彼らの才能や発想を引き出すには、会社側がそのための環境を用意しなければなりません。リスクはありますが、新人社員にビジネスの中心となる部分を任せ、そのなかで彼らを成長させることが、結果的には会社の生命線になると考えています」
野村證券、ゴールドマン・サックスという職歴を経て、屋代社長が夫の哲郎さんとともに同社を設立したのは01年。事業の核となるのは独自に開発したサイト内検索システム「Spook」で、旅行代理店や通販サイトなどの大手企業に採用されてきた実績を持つ。
前年比150%という成長による事業の拡大に伴い、同社が新卒採用を始めたのは4年前のことだった。しかし、優秀なエンジニアを探して東大や京大などに出向いても、「最初はまったく興味を持ってもらえなかった」と彼女は振り返る。企業PRに力を入れて雑誌などへの露出を増やし、同時に「スローガン」のようなベンチャー企業専門の人材会社にも自社をアピールするようになったのはその頃のことだった。