彼女が社の採用ページの中で強調したのは、次のような問いかけだ。
〈皆さんが働くにあたって大事にしたいことは何ですか? 安定したブランドのある組織で働くことでしょうか? 専門性や技術を極めることでしょうか? 安定したブランドのある組織で働くことは自尊心を高めてくれるかもしれませんが、組織ブランドを取り除かれた自分にはどれほどの価値を生み出せるでしょうか?〉
自社がプロフェッショナルな人材を育てる「場」であること、すべての社員が対等であるような関係を目指していること、そしてみなが尊敬し合う「フェアネス」の価値観を重視していること――。こうした社風を好業績とともに前面に押し出すことで、学生の応募者数は徐々に増えていったという。
では、実際に同社へ今年入社した新入社員は、彼女のメッセージをどのように受け止めたのだろうか。
東京大学大学院卒の光山倫央さんは、研究室の友人たちが日立や東芝、ソニーといった企業に就職するなか、ベンチャー企業に就職先を絞った。彼が友人たちと異なる選択をしたのは、「長い時間をかけてその企業でしか通用しないスキルを身につけ、40歳を過ぎてリストラや倒産になるほうが怖い」という思いがあったからだった。
「それにまだ世の中に知られていない企業だということが、むしろ魅力に感じられたんです。世の中に出回っている商品はどんどん陳腐化していくけれど、検索という行為をやめる人はいない。検索の技術を究めたいと語る社長に共感し、ここに来ればこれから伸びていく組織をつくる側にいられるかもしれない、と強く感じました」
同じく東大大学院出身の石原光訓さんも、同社の将来性に惹かれたと話す。
「『安定』ってそもそも何だろう、と就職活動をしているときに考えてきました。日本を代表するような仕組みの出来上がった企業は、自分にとって安定企業には見えなかった。組織が大きいことよりも、組織が今まさに成長していることのほうが、より『安定』した就職先のように感じられたんです」
もちろんテラモーターズの徳重徹社長が言うように(http://president.jp/articles/-/10190)、彼らが望むようなベンチャー企業は決して多くあるわけではないことも確かだろう。それはベンチャー企業志向の学生と企業のマッチングを行うスローガンやジョブウェブといったサービスが、近年になって業績を伸ばしている背景でもある。
●直近2年の新入社員の「東京一工早慶(※)」卒比率79%
社員数52人。来年4月には東大院卒を含む9人を採用予定。「元気でユニークな人より、大人しいけどきちんと仕事をする人を採りたい」(屋代社長・写真右奥)。「社長の経歴にはすごく安心感があります」(東大院卒、新入社員の五十嵐渉さん・写真右)。「20代で年収1000万円を超える人もいます」(新卒採用担当の外山正和さん・写真左)。
(※)※東大、京大、一橋大、東工大、早稲田大、慶応大。