最後の1時間で、レンジャーズ側はほんの少し歩み寄ってきた。こちらの妥協額には届かなかった。野村氏らは「もうひと粘り」した。しかし、相手はそれ以上動かなかった。

そこでいったん中座してテレム氏と相談した。ここが潮時、と見た両氏は、球団側と一気に歩み寄った。野村氏側が譲歩した分は諸条件で埋め合わせた(後に、「メジャーNo.1投手に与えられるサイ・ヤング賞獲得などでプラス400万ドル」などと報じられた)。契約書にサインして提出したのは、リミットのわずか3分前。相手がダルを欲しがっていたのは自明だったとはいえ、まさにギリギリの交渉だった。

「こうした交渉事に“満足”はありえないが、双方が勝った形で契約が出来上がったことと、ダル選手が満足してくれたのが一番嬉しいですね」

野村氏はそう振り返る。

「いい代理人かどうかは、選手が決めること。きれいごと抜きで、選手にとって何が一番かを考えないと」

団 野村
1957年生まれ。93年のマック鈴木、95年の野茂英雄両選手をはじめ、主に日本人大リーガーの代理人を務める。2006年、KDNエージェンシー設立。
(小原孝博=撮影 AP/AFLO、PANA=写真)
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