“リーマン前”なら香川の移籍金は倍以上

団 野村氏

「米国テキサス州入りがリミットの3日前。最後の2日間はカン詰め状態。ピザやサンドイッチを食べながら交渉を続けました」――そう振り返るのは、米大リーグ・レンジャーズのダルビッシュ有投手(以下ダル)の移籍交渉の代理人を務めた団野村氏。野村氏は12年1月、同じ代理人のアーン・テレム氏とともにダルの移籍交渉を引き受け、6年契約で総額6000万ドル(約46億円)という破格の条件を勝ち取った。

「2人か3人で臨んだほうが、交渉は有利に運べる。警察みたいに一方が強気に攻め、もう一方が優しく応対する。いろいろ議論する中で相手がポロッとこぼした言葉を拾って、相談してチャンスを見出したり。今回はその連携がいい感じでできた」(野村氏)

プロスポーツ選手の入団・契約更改・移籍といった交渉事を、本人に代わって請け負うのが交渉代理人(エージェント)だ。野球の場合は米大リーグ選手会(MLBPA)が、サッカーの場合は国際サッカー連盟(FIFA)傘下の各国サッカー協会が試験や面接、書類審査などを経て認可する。

日本の代理人の草分け的存在である野村氏は、1995年に米ドジャース入りした野茂英雄投手をはじめ、主に日本人選手の交渉代理人を務めてきた。野村氏と提携したテレム氏は、松井秀喜外野手(現レイズ)らを手掛ける米国の大物代理人の1人である。

ダルや、サッカー日本代表MF香川真司の独ドルトムントから英名門マンチェスター・ユナイテッドへの移籍が盛んに報じられ、それに欠かせない代理人の存在の認知度は高まっている。

が、その実像についてはまだまだ曖昧だ。「高圧的」「金銭にシビア」といった“肉食”イメージが先行しがちで、巨額のマネーとそこに絡むフリーランサー等々、我々小市民が胡散臭さを覚える要素には事欠かず、それが逆に、なんか凄い交渉術を使っていそう……という憧憬に繋がっている。

「代理人は皆個性的。元気でパワーがあるし、選手への思い入れも強い」