疲労を溜めないためには、どうすればいいか。スポーツトレーナーで理学療法士の中野崇さんは「デスクワークなど長時間の座り姿勢は、柔軟性の低下を招きやすい。筋肉が固い状態は、血流が低下しやすく、疲労物質の排出が遅れ、回復が妨げられる」という――。
※本稿は、中野崇『40代からの脱力トレーニング 忙しくても体調がいい人の密かな習慣』(大和書房)の一部を再編集したものです。
重力に抗って姿勢を保持するから肉体が緊張する
基本的に、人間の身体は首、肩の上部、大胸筋、腰、前モモ、中殿筋(骨盤と股関節をつなぐお尻の筋肉)、外モモが緊張しやすい構造をしています。
とくに、デスクワークが多い方は首や肩の上部、腰が緊張を起こしやすいと思います。
なぜ、これらの部位が緊張を起こしやすいのか、もう少し詳しく解説します。
私たちの身体には垂直方向、つまり頭から足へと縦方向に、常に重力という強い力がかかり続けています。
頭の重さは成人で体重の約10%。それほど重いものを支えながら非常に不安定な二足支持で姿勢を保って移動するために、身体には緊張状態が求められているのは、既に説明した通りです。
とりわけ、イスに座った状態では、股関節や足部などバランスを保持するのに協力してくれる部位が使えないため、骨盤と背骨だけで頭の重さを支える状態をつくらなければなりません(図表1)。
頭の重心線が背骨の重心線(S字曲線の前後の振り幅の中央)を逸脱した瞬間、首や腰や肩の筋肉を使ってバランスを維持する必要が生じてしまいます。
これが力みの正体です。立位時の脚の緊張も含めて、肉体を緊張させることの根本は、重力に抗って姿勢を保持することにあります。


